ほわいとあっぷる 【SS】グッドエンディング 忍者ブログ

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【SS】グッドエンディング

 創りあげられた私は、孤独を味わって生きてきた。
 私は誰も知らない此処に生まれたの。
 私が生まれる前。魔法使いのお父さんは、私達だけの此処を作り上げた。
 そんなお父さんは、私に沢山の外を教えてくれたの。

 話を聞いている内に、私は外という所へ出たくなった。
 絵本も、お絵かきも、お人形さんも、1人じゃつまらないの。
 私の身体は此処だと自由に動くのに、外は見えるばかりで出られやしない。
 絵本は外を見せてくれて、私の心はずっと踊りっぱなしだった。
 甘くて美味しいお菓子。そして、一緒に遊んで笑ったり泣いてくれるお友達。
 そう。何よりも私は、自分と同じ年くらいの女の子と仲良くなりたかった。

 皆はお客様を呼んで一緒に暮らすのが好きだけど、私は自分が出かけて行って、そのまま外で暮らしたい。
 皆は私みたいに、自由に動いたりお話しできない人ばかり。
 絵本読んだお友達とは全く違うものだった。

 でも私が抜けるには、外の誰かと入れ替わらないと駄目みたい。
 そしてまた別に外から来た人と一緒に此処を抜け出せば、私は外の住人になれる。
 それはお父さんに聞いたお話。誰かと存在を入れ替わって、誰かと共に此処から出るの。
 早く誰かこないかなぁ。早く誰かこないかなぁ。

 そんな中、久しぶりに外にお客様がやってきていた。
 私達を見つめて、色んな表情をして見ていたの。
 誰をご招待しようか、誰と一緒に遊ぼうか。
 そんな皆の会話とは別に、私は1人の少女を見つけて釘付けになっていた。

 こういうのを運命の出会いというのかしら。
 私はあの子とお友達になりたいと思った。
 だから、私は招待したの。人が立ち入ること許されない、此処に。
 もう1人の私の代わりになってくれる相手は、お人形さんが選んでいた。
 私と同じで、一目惚れをしたみたい。

 友達を招待してから、私はすぐに迎え入れる為に彼女の元へ走った。
 此処は自分勝手な人達ばかりで、ついつい彼女を苛めてしまうだろうから、私が守ってあげたかったの。
 大好きなあの子に気に入られたい。ただひたすら想いを寄せて。

 でも、あの子は私を受け入れてはくれなかった。
 初めて出会った時、彼女はお人形さんが選んでくれた化物と一緒だったの。
 私の読んだ絵本の1つに、化物が主人公の大事な友達を連れ去って行く話がある。
 私は今まさに、それと同じ状況だった。私の友達をあいつは騙していたの。
 そいつは人を騙して楽しそうにしている最低な化物だった。
 そんな私の憤りを知らずに、化物は笑って私に馴れ馴れしく話しかけてくる。

 騙されたりなんかしない。あんたなんか大っ嫌い。
 私の友達をどうするつもりなの。絶対に許さない。
 だから必死に私は2人の間を引き裂いて、彼女を正気へ戻そうとしたの。
 けれども、彼女の視線は私に向いてはくれなかった。

 どうして。私を信じてくれないのよ。
 あなたは騙されているのよ、あの化物に。
 私の言うことを信じて。私はあなたと一緒に、外に行きたい。 
 私は彼女に説得するけれども、「代わりなんていないんだよ」と答えるばかりだった。

 それでも私はあの子と共に、外の世界を旅してみたいと思ったの。
 色とりどりのお菓子も、お友達も、外の世界で欲しいと思っている。
 化物は友達を支配して、お人形さんの気持ちを踏みにじった、最低な奴。
 邪魔だな。邪魔だな。邪魔だな。邪魔だな。
 友達を助けてあげたいな。お人形さんと一緒に此処へ住まわせてあげたいな。

 だから、私は化物の存在を奪ってでも、私の居場所を手に入れようとした。
 化物を此処に置き去りにしてでも、友達を助けたい。
 私の読んだ絵本の中に出てきた主人公は勇者だった。
 剣を手に取り、同じように私も化物を始末するの。
 例えあの子を怖がらせてしまおうとも。恨まれたとしても構わない。
 私はこの子と共に、外へ行きたかったの。

 けれども、一緒になれなかったのは私の方だった。
 燃えていく創られた私を見て泣き叫ぶけれど、火は留まることを知らない。
 お父さんが創った黄色い髪も、緑の服も、白い身体も、全部黒く塗り潰されていく。

 ずるいよ。私も沢山、あなたと遊びたいのに。
 あんな化物よりずっとあなたの事を思っているのに。
 いっぱい友達を作るお勉強もしたのに。
 御免ね。化物から助けてあげられなくて。怖い思いさせてしまって。

 そう問いただすとあなたは、涙を流して謝るばかり。
 あなたは悪くないのに、とても悲しんでいた。
 私は此処にはもういられなくて、どんどん色が失せてゆく。

「イヴ。大好きよ」
 最後に私の想いを伝えたら。
「ごめんね。メアリー」
 と、彼女の想いを受け取ったの。
 化物は勇者に倒された。
 きっと代わりなんて無いのよね。

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