創りあげられた私は、孤独を味わって生きてきた。
私は誰も知らない此処に生まれたの。
私が生まれる前。魔法使いのお父さんは、私達だけの此処を作り上げた。
そんなお父さんは、私に沢山の外を教えてくれたの。
話を聞いている内に、私は外という所へ出たくなった。
絵本も、お絵かきも、お人形さんも、1人じゃつまらないの。
私の身体は此処だと自由に動くのに、外は見えるばかりで出られやしない。
絵本は外を見せてくれて、私の心はずっと踊りっぱなしだった。
甘くて美味しいお菓子。そして、一緒に遊んで笑ったり泣いてくれるお友達。
そう。何よりも私は、自分と同じ年くらいの女の子と仲良くなりたかった。
皆はお客様を呼んで一緒に暮らすのが好きだけど、私は自分が出かけて行って、そのまま外で暮らしたい。
皆は私みたいに、自由に動いたりお話しできない人ばかり。
絵本読んだお友達とは全く違うものだった。
でも私が抜けるには、外の誰かと入れ替わらないと駄目みたい。
そしてまた別に外から来た人と一緒に此処を抜け出せば、私は外の住人になれる。
それはお父さんに聞いたお話。誰かと存在を入れ替わって、誰かと共に此処から出るの。
早く誰かこないかなぁ。早く誰かこないかなぁ。
そんな中、久しぶりに外にお客様がやってきていた。
私達を見つめて、色んな表情をして見ていたの。
誰をご招待しようか、誰と一緒に遊ぼうか。
そんな皆の会話とは別に、私は1人の少女を見つけて釘付けになっていた。
こういうのを運命の出会いというのかしら。
私はあの子とお友達になりたいと思った。
だから、私は招待したの。人が立ち入ること許されない、此処に。
もう1人の私の代わりになってくれる相手は、お人形さんが選んでいた。
私と同じで、一目惚れをしたみたい。
友達を招待してから、私はすぐに迎え入れる為に彼女の元へ走った。
此処は自分勝手な人達ばかりで、ついつい彼女を苛めてしまうだろうから、私が守ってあげたかったの。
大好きなあの子に気に入られたい。ただひたすら想いを寄せて。
でも、あの子は私を受け入れてはくれなかった。
初めて出会った時、彼女はお人形さんが選んでくれた化物と一緒だったの。
私の読んだ絵本の1つに、化物が主人公の大事な友達を連れ去って行く話がある。
私は今まさに、それと同じ状況だった。私の友達をあいつは騙していたの。
そいつは人を騙して楽しそうにしている最低な化物だった。
そんな私の憤りを知らずに、化物は笑って私に馴れ馴れしく話しかけてくる。
騙されたりなんかしない。あんたなんか大っ嫌い。
私の友達をどうするつもりなの。絶対に許さない。
だから必死に私は2人の間を引き裂いて、彼女を正気へ戻そうとしたの。
けれども、彼女の視線は私に向いてはくれなかった。
どうして。私を信じてくれないのよ。
あなたは騙されているのよ、あの化物に。
私の言うことを信じて。私はあなたと一緒に、外に行きたい。
私は彼女に説得するけれども、「代わりなんていないんだよ」と答えるばかりだった。
それでも私はあの子と共に、外の世界を旅してみたいと思ったの。
色とりどりのお菓子も、お友達も、外の世界で欲しいと思っている。
化物は友達を支配して、お人形さんの気持ちを踏みにじった、最低な奴。
邪魔だな。邪魔だな。邪魔だな。邪魔だな。
友達を助けてあげたいな。お人形さんと一緒に此処へ住まわせてあげたいな。
だから、私は化物の存在を奪ってでも、私の居場所を手に入れようとした。
化物を此処に置き去りにしてでも、友達を助けたい。
私の読んだ絵本の中に出てきた主人公は勇者だった。
剣を手に取り、同じように私も化物を始末するの。
例えあの子を怖がらせてしまおうとも。恨まれたとしても構わない。
私はこの子と共に、外へ行きたかったの。
けれども、一緒になれなかったのは私の方だった。
燃えていく創られた私を見て泣き叫ぶけれど、火は留まることを知らない。
お父さんが創った黄色い髪も、緑の服も、白い身体も、全部黒く塗り潰されていく。
ずるいよ。私も沢山、あなたと遊びたいのに。
あんな化物よりずっとあなたの事を思っているのに。
いっぱい友達を作るお勉強もしたのに。
御免ね。化物から助けてあげられなくて。怖い思いさせてしまって。
そう問いただすとあなたは、涙を流して謝るばかり。
あなたは悪くないのに、とても悲しんでいた。
私は此処にはもういられなくて、どんどん色が失せてゆく。
「イヴ。大好きよ」
最後に私の想いを伝えたら。
「ごめんね。メアリー」
と、彼女の想いを受け取ったの。
化物は勇者に倒された。
きっと代わりなんて無いのよね。
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