いつからだろうか。こんなにもクリスマスが苦しく感じるようになったのは。
いつからだろうか。サンタクロースを信じなくなってしまったのは。
サンタが馬鹿げた幻想であると気付いたあの日から、クリスマスが憎たらしく感じていた。
サンタの正体を破って見せようと、夜更かしした頃が懐かしい。
世間はクリスマスだけれども、私に特別予定は無し。
デートも無いし、クリスマスパーティも無い。
独り身の私にとっては、今日という日は何事も無い日常の1つ。
だけど、やっぱり気になってそわそわしてしまう。
彼氏でも入れば、何かが変わるのだろうか。
この妙に腹立たしくて、切ない感情を変えることはできるのだろうか。
なら、彼氏をつくってみようと思っても、もう今日はクリスマス。
今更手遅れだし、つくってみたいとも思えない私だった。
――そもそも彼氏なんかできた、試しなんてないんだけどさ。
あ~もう。
こんな日に限って、雪なんか降ってきちゃったりしてさ。
クリスマスの雰囲気がむんむんでてきてるじゃないか。
何か妙に、盛り上がってきてるじゃないか。
街行くカップル達が「雪だ雪だ」と騒ぎ立てているよ。
「……そっか、おめでとう」 私はカップル達に向かってぼそっと呟き、そそくさと自宅へと歩み出した。
いいんだこれで。世間はおめでたい日ってのは、変わらないのだから。
彼らは幸せ、私は不幸せ。
子供の頃は、世界中の人々が喜びに満ちる日だと信じきっていたのに、今ではこんなにも悲しみに満ちている。
大人になってから、純粋だった時と比べて、随分と私は汚くなってしまったものだ。
馬鹿みたいだなぁ、私。
そんなに愚痴ってみた所で、何も変わるはず無いのにさ。
孤独とはこんなにも哀しかったものだったんだ。
別に、悔しいとは思っていない。
だけど、こうぎゅっと胸が締め付けられるものがある。
そんな魔力があるのだ。クリスマスやらバレンタインやらと。
――最高に、最悪な気分だ。
家の扉を開けてすぐ、何となく買ってしまったケーキと鞄をテーブルの上に置いた。
どうせまた、切なくなるに決まってるのに、何でケーキなんて買ったんだろうね。
置いたケーキを見つめていると、投げ捨てたくなる衝動にかられたが、やった所でまた哀しくなるのは目にみえているから止めることにした。
疲れた……ちょっと寝転がろう。
私はどさっとベッドにうつ伏せになるようにして、倒れてみたりした。
切なさ、哀しさ、最高潮。
悔しさ、憎たらしさ、絶好調。
「アハハハハ……」
涙よりも、笑いが込み上げてきちゃうよ。
枕に顔を押し付け、ぐっと悔しさをこらえる。
今日という日が早く過ぎますように。
世間はクリスマスの中。
世界中の皆様へ、大人になった私が祝いの言葉をお届け致します。
幸せそうなカップル達へ、おめでとう。相手を大事にしてあげるんだよ。
幸せそうな子供達へ、おめでとう。その純粋な気持ちを、いつまでも忘れないようにね。
不幸せなあなた達へ、大丈夫。世界はそんなに哀しいものじゃないよ。
まぁ、何ですか。
色んな人がいるだろうけど、今日は一応めでたい日ってことで。
私はこんなんだけど、あなた達が幸せでいられることを祈ってみます。
「――メリークリスマス」
決して誰にも届くことない、偽善ぶった私のクリスマスメッセージ。
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