僕の彼女は、人食いだった。
出会いは僕がコンビニへ向かおうと、深夜に家を出た時だ。玄関を出ると突然、彼女が目の前に現れた。
「僕に何か用ですか?」
「私は、人食いです」
「はい?」
「あなたに一目惚れしました。付き合って下さい」
彼女はそう、初々しく僕に告白してきたのだ。
僕は混乱したが、彼女もまた少し混乱している様子だったので、とりあえず家に入れてあげた。何故か服はボロボロだったので、身嗜みの整えてあげた。すると彼女はとても美しい女性だということが分かった。
こうして彼女の美貌に心が揺らいだまま話し合いを続けた結果、僕達は付き合うことになった。まさか本当に主食が人間だったと知った時は驚いたが、今は大分落ち着いている。とりあえず彼女はそのまま僕の家に居座らせた。
彼女は深夜、食事に出かける時以外はずっと僕の家にいた。食うことには慣れているのか、毎日何事も無く帰宅する。誰にも見つかることもなく、どういう訳か綺麗に丸ごと人を食うものだから証拠が一切残らない。だから周辺で人食いがいるというニュースを聞いたことがなかったのだ。
そんな中、何事も無く暮らしていたが僕は彼女に言いたいことが1つだけあった。生活をするのに最低限くらいの行動して欲しいということだ。彼女はあまり頭が良い方とは言えず、食事・睡眠・性交以外は何も知らなかった。
料理を作ることが出来ない。洗濯も出来なければ、掃除すらままならなかったのだ。何回やり方を教えても覚えないものだから、流石に呆れてしまった。仕方ないので日常に差し支えないように、今後時間をかけて教えていくことにしよう。
「君は人間以外のものを食べることができないのかい?」
ふと僕はそう彼女に聞いてみた。
「食べることはできるけど、私は人間を食べることが生きがいなの。どんな人間だって食べてみせるわ」
彼女は自慢気にそう言ってみせたが、隙がある事に気付いた僕は反論してみた。
「いや、君には食べられない奴がいる」
「そんな馬鹿な」
「ゲームをしよう。そいつを見つけ食せるまで、外出は禁止。いいね?」
唯一の自信を貶された彼女は、分かったと言うと深刻な顔をして考えだした。それを見届けた僕は外出し、暫くの間、友人の家に泊まらせてもらうことにした。
数日後、帰宅すると下半身が無くなっている彼女の姿があった。力を無くした彼女の両手には臓器が握られており、赤い絨毯にはピンクの塊が散らばっていた。
他人は誰でも食べることできるが、自分だけは無理だと思ったのだろうか。無垢な彼女は外出することもなく、自分を食してみせたのだ。
後は警察に任せよう。ちゃんと話せば、僕に罪は無いということが分かってくれるだろう。
僕は自らを本当に食えない男だなと思った。
彼女に勝ち目はなかった。外出を禁止しているのに人を食いにいけるはずがない。結局彼女は自分を食ったが、どちらにしても目的は達成した。僕は生き延びたのだ。
彼女と過ごした日々を思い出すと、我慢していた恐怖心が今更になって襲ってきて、僕は死体の前で大笑いしていた。
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