ほわいとあっぷる 【長編】瞳を見据えて その4 忍者ブログ

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【長編】瞳を見据えて その4

 目が覚めると頬から伝わる柔らかい感触が、もう一眠りしろよと誘惑してきた。しかし、枕さん。そういうわけにもいかない。私は二度寝の誘惑を拒否して、身体をのそのそと起こした。目覚まし時計を見ると、アラームの時間にはまだ五分ほど時間があった。寝とけばまた五分後にこいつが起こしてくれるんじゃないかと思ったものの、流石に五分寝たとこで疲れも取れないし、眠気も取れるわけがないだろうと考えを改め、鳴る前にアラームを切った。天井に両手を伸ばすように背伸びをし、やる気のない声を出した。こうしてまた、一日が始まる。

 私はハンガーにかけている制服と鞄を持って自室から出て、一階に降りる。リビングの窓から朝日が射し込んでいて、小鳥のさえずりが私の心を安らかにさせてくれた。パパはホームページを作る仕事をしていていつも朝が早く、そのため私が起きる頃にはもう家にいないことが多い。パパがいないのは寂しいが、人の気配がしない場所というは私が私でいられる唯一の場所に思える。

 それはさておき、昨日の天気予報で今日は一日中晴れとのことだったので、ベランダに洗濯物を干していくことにしよう。パパは会社に向かう前に必ず洗濯物を回しているため、それを干すのは私の係となっている。いつもなら部屋干しですませてしまうのだけど、晴天と言われた日にはできる限り外で干すようにしていた。朝シャワーを浴び、制服に着替えて洗面台で髪を乾かしていると、洗濯機から洗濯が終わったことを知らせる音が鳴った。洗濯物をそのまま干したいとこだが、ベランダに行くため髪型のセットだけ済ませてしまおう。髪が伸びてからと言うもの、女子は髪を結ばないと校則に引っかかるためずっとポニーテールでいた。そろそろショートにするべきかとも思うけど、未だに悩み続けている。せっかく伸ばした髪をばっさり切るというのは、やはりためらわれるのだ。後ろ髪を結んで髪型を整えた後、洗濯機の中から洗い終わった服を全てカゴに入れて、二階へと持ち運んだ。自室の窓からベランダに入ると、カゴの中から洋服を一つとり、しわをのばすために服を振ったり叩いたりする。しわをのばし終えると、事前に部屋に置いてあるハンガーを取ると一つ一つ洋服を干していく。十分もすると全て干し終え、カゴを持ってまた一階に戻った。

「さて。今日はあんパンでいいか……」

 キッチンに入り、冷蔵庫の中からあんパンと牛乳、コップを取り出すと、リビングに戻ってテーブルにそれらを並べるように置く。テレビをつけるといつも見ているニュース番組にチャンネルを合わせ、ソファーにどさっと腰を下ろし、いただきますと言って袋の中からあんぱんを取り出した。

 ニュースは政治家の不祥事、交通事故、芸能人が農業体験をするコーナーと、情報が移り変わっていくのを学校に行く準備をしながら見るのが日課になっている。あんパンを食べ牛乳を飲み干すと、テレビを消してコップを洗いにいく。昨晩のうちに教科書類を入れた鞄を片手に持つと、部屋の電気を消し忘れていないか確認して、玄関で靴を履いた。

「いってきます」

 誰もいない家にそう一声かけて、家の鍵をしめた。

続く

前の話<その3>

次の話<その5>

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