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    <title>ほわいとあっぷる</title>
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    <description>ブログ主による、物書きについてや現状報告などをさせてもらうブログです。
主にオリジナル作品を投稿しています。</description>
    <dc:language>ja</dc:language>
    <dc:date>2017-07-03T01:27:52+09:00</dc:date>
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    <title>サイト更新終了の知らせ</title>
    <description>お久しぶりです。ジョニーです。
以前より動きがなかった本サイトですが、今後の活動については以下の内容で纏めさせていただきます。

・ほわいとあっぷる HP
http://whiteapple.wp.xdomain.jp/
 &amp;amp;rarr;近況報告や各種まとめなど
https://whiteapple....</description>
    <content:encoded><![CDATA[<p>お久しぶりです。ジョニーです。<br />
以前より動きがなかった本サイトですが、今後の活動については以下の内容で纏めさせていただきます。<br />
<br />
<strong>・ほわいとあっぷる HP</strong><br />
<span style="text-decoration: line-through;">http://whiteapple.wp.xdomain.jp/<a href="http://whiteapple.wp.xdomain.jp/" title="" target="_blank"></a></span><br />
<span style="text-decoration: line-through;"> &rarr;近況報告や各種まとめなど</span><br />
<a href="https://whiteapple.hatenadiary.com/" title="">https://whiteapple.hatenadiary.com/</a><br />
&rarr;2020/1/1 HPが消失して、hatenaへ移行しました。<br />
<br />
<strong>・Pixiv</strong></p>
<p><a href="https://www.pixiv.net/member.php?id=747437" title="" target="_blank">https://www.pixiv.net/member.php?id=747437</a><br />
&rarr;気が向かない限り、こちらで作品投稿を続けます<br />
<br />
<strong>・Twitter</strong><br />
<a href="https://twitter.com/Johnny_0514" title="" target="_blank">https://twitter.com/Johnny_0514<br />
</a>&rarr;小話や雑記、報告など<br />
<br />
<strong>・Instagram</strong><br />
<a href="https://www.instagram.com/0514_johnny/" title="" target="_blank">https://www.instagram.com/0514_johnny/</a><br />
&rarr;息抜きに風景の写真投稿してます。HP／Twitterにも連動<br />
<br />
また、特に消す理由もないので、こちらに掲載した過去作品はそのままとします。<br />
2016年は調べ物ばかりで何も創作してなかったので、今年こそとは思います。<br />
もう半分過ぎていますね。恐ろしい&hellip;&hellip;。</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>日記</dc:subject>
    <dc:date>2017-07-03T01:27:52+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
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    <title>【SS】まどろむ旅の途中</title>
    <description>
　恋の色をご存知かしら。
　確かに私はそれを感じていたはずなのに、知らぬ間に泡沫の如く、水中へ沈んで溶けていった。
　沈みゆくこの体は渦巻いて色褪せていく。私は、これまで何を見ていたのかしら。
　平和を願って、宙で揺らめいて輝く日の光を見て、恋をしていた。
　誰にも見えない恋を。だから瞳を閉じて、...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>
<div>　恋の色をご存知かしら。</div>
<div>　確かに私はそれを感じていたはずなのに、知らぬ間に泡沫の如く、水中へ沈んで溶けていった。</div>
<div>　沈みゆくこの体は渦巻いて色褪せていく。私は、これまで何を見ていたのかしら。</div>
<div>　平和を願って、宙で揺らめいて輝く日の光を見て、恋をしていた。</div>
<div>　誰にも見えない恋を。だから瞳を閉じて、私はあなたを殺していくの。</div>
<div>　シナプスの星々が、手を取り合って都合の良い夢を見せてゆく。</div>
<div>　――だから、ごめんね。これ以上あの日々を思い出せないの。</div>
</div>
<div>　</div>
<div>*****</div>
<div>　</div>
<div>
<div>　地底、元灼熱地獄に蓋をするように建造された屋敷――地霊殿。</div>
<div>　規則的に並んで配置されたステンドグラスが特徴的な屋敷だが、その屋敷の主である古明地さとりはよく自室に篭って読書を嗜んでいた。</div>
<div>　さとりの自室は至ってシンプルで、彼女好みの小説や資料で占める書棚が部屋の壁を沿うように配置され、中央に作業机と椅子。後は服をしまうタンスが部屋の隅に置かれていた。</div>
<div>　ほのかに輝くランプが部屋中を明るくして、さとりの横顔を淡く照らしていた。</div>
<div>「それでね、博麗神社に行ったら、頭に角が生えた小さい子がいたの」</div>
<div>　さとりは、放浪から帰ってきた実の妹である古明地こいしの話を頷きながら聞いていた。</div>
<div>　さとりはいつも突然目の前に現れるこいしを見ると、読みかけの本に栞を挟んで、机の引き出しにそっとしまう。そして、机に身を乗り出して話しかけてくるこいしの話に集中する。どんなに話が盛り上がっている時でも、その姿勢が崩れることはなかった。外で遊んでいる内に汚れたこいしの服をすぐにでも洗ってあげたいと思うさとりであったが、ニコニコと真っ先にお話したいと寄ってくるこいしの邪魔をする気にはなれない。</div>
<div>「えっと、名前はなんだったかしら」</div>
<div>「鬼の伊吹さんでしょう？　鬼の四天王の一人って話していた」</div>
<div>「あっ、そうそう。伊吹よ。自分の家みたいに寝っ転がっていたわ」</div>
<div>　忘れっぽいこいしは、さとりに忘れたことを教えてもらいながら会話を続けていた。地底に住む妖怪達は、地上へは基本出て行くことは無い。しかし、例外としてこいしは「無意識を操る程度の能力」を所有しており、他者に自身の存在を認識されることが困難なため、昔から出かけることがあった。今までは地上の者と交流があってもすぐに忘れ去られていたこいしだが、過去に地霊殿に訪問した地上の人間――博麗神社の巫女である博麗霊夢や魔法使い霧雨魔理沙などに存在を認識されたことにより、地上の者達にも関わりを持つようになっていた。</div>
<div>「それでね、伊吹がね。よぉ来たねぇ、せっかくだからお饅頭食って行きなさい――っていっておもてなししてくれたの」</div>
<div>「近所に住む知り合いのおばあさんみたいなこと言うのねぇ」</div>
<div>「すっごい美味しいお饅頭だったのよ。今思い出したらよだれが垂れそうになるわ」</div>
<div>「あんたは食いしん坊さんね」</div>
<div>「それがね。そのお饅頭、霊夢のものだったのよ。珍しく高級なお菓子買ってきたとか言っててね。もう頭から角が出そうなほどカンカンだったのよ」</div>
<div>　両人差し指を角に見立てて頭に突き立てるこいし。鬼に対して鬼のように怒る人間なんてあそこの巫女くらいなものよねぇと、さとりは思っているとこいしがそのまま頭をさとりに向けて角としていた人差し指を交互に飛ばし出した。</div>
<div>「ていてい」</div>
<div>「痛い痛い。やめなさい」</div>
<div>「ふふふ、それでね。その後、二人は大喧嘩したのよ。伊吹は遊んでもらえて楽しそうだったけどね」</div>
<div>　何事もなかったようにこいしは手を引っ込めて、放浪話を続けた。</div>
<div>「綺麗で激しい弾幕だったわ。見てるほうが熱くなっちゃうくらい」</div>
<div>「それで混ざってもらってきたと」</div>
<div>「あら。お姉ちゃん、私の心を読めちゃった？」</div>
<div>「&hellip;&hellip;いや、その汚れた服を見ていれば分かるわよ」</div>
<div>「なるほど。そうか。弾幕ごっこ、とても楽しかったわ。そりゃもう二人とも、お強いのだから」</div>
<div>「そう――それは良かったわ」</div>
<div>　一通り話し終えたこいしは、そろそろお風呂に行って来なさいと諭すさとりの言うことを聞いて、部屋から飛び出していった。さとりは机の上に置いてあったティーカップに手を取り、残った紅茶をすする。冷めて渋くなった紅茶が鋭く舌の上を通っていく。</div>
<div>　一息をついて空になったカップを見て、さとりはこいしのことを考える。最近、地上の世界やそこに住む人々に対して興味を持ちつつある。姉であるさとりとしては嬉しくもある変化ではあったが、不安は拭えないものであった。何故なら古明地姉妹――覚り妖怪は「心を読む程度の能力」を所有し、人間や妖怪、怨霊から忌み嫌われる宿命を背負っていたからである。こいしはその力で周りから嫌われることを知り、覚りの目を閉ざして自身の心すらも閉ざしてしまった。あの子に心など無く、さとりですら心を読むことができない。ただ自身の本能によって流されるまま生きるこいしを見てさとりは、いつしか二度と会えない日が来るのではないかと不安に思っていた。きっと次の日の朝になれば、また放浪の旅に出かけてしまう――他者と関わり過ぎて、少しでも感情が戻ってしまった時に嫌われてしまったら、またつまずいてしまわないだろうかとさとりは脳内で深く考えてしまう。こいしがどこに向かってしまうのか、誰にも覚ることができないのだから。</div>
</div>
<div>　</div>
<div>*****</div>
<div>　</div>
<div>
<div>　世界の目は自身の目。</div>
<div>　美しくするにも惨たらしくするにも、私の心で決まってゆく。</div>
<div>　残酷で生臭くて体が腐り落ちてしまいそうな、赤い世界を見ていたの。</div>
<div>　私に向ける世間の瞳の奥底には、嘘の子種を孕ませていた。いつか咲かせて、私の心を食い千切っていくの。</div>
<div>　悪足掻きで良かった。偽物でも良かった。私はフラスコの中で嘲笑われ続けることが恐怖だった。</div>
<div>　私は心を閉ざした代償に、虹色のパレットを手に入れた。赤色を全て白に塗り潰して、何も無かったことにしたの。</div>
<div>　私好みのきらびやかな彩りで夢中になるまで描き殴る。お菓子だらけの雲の上、地平線まで広がる湖、一面に咲き誇る絨毯のような花畑。薔薇で満たされた庭園。</div>
<div>　愛してやまない世界を探しに、私は探し物を見つけに旅をする。そして好きだったものを忘れないように、全て閉じ込めるのよ。</div>
<div>　没我の愛でフラスコを満たして、いつかそれを私が飲み干すの。</div>
<div>　きっと嘘ぱっちな味がするけど、全て抱きしめていけるのよ。</div>
</div>
<div>　</div>
<div>*****</div>
<div>　</div>
<div>
<div>「で、何であんたがここにいるのよ」</div>
<div>　突然博麗神社に訪問してきたさとりを、博麗霊夢は警戒していた。</div>
<div>　博麗神社は幻想郷の最東端に位置しており、ここから展望する一面の眺めは絶景とされている。だが、人里からは遠く離れており、ここに来るまでの道程の安全性も確保されていないことから、参拝客が全く見当たらない神社とされている。そのため、霊夢は賽銭による収入は期待できず、幻想郷で起きた異変を解決することを生業としている。</div>
<div>　そこへさとりは黒いフードを被って顔を見られないように境内までやってきたが、すぐに臨戦態勢を整えている霊夢を見ると目線を逸らして、溜息を一つ吐いてしまった。本来は人間が来る場所に妖怪が来たら、警戒しても仕方ないかと思ったさとりは、フードを外して霊夢の前に顔を見せた。</div>
<div>「そんなに嫌な顔しなくてもいいじゃないですか&hellip;&hellip;」</div>
<div>「てかなに、その黒いフード。それで顔を隠しているつもり？」</div>
<div>「いや、私みたいな嫌われ者は、あまり顔を知られてしまうと八つ裂きにされてしまいますので」</div>
<div>「陰湿なことを言うのねぇ。まぁ、確かに嫌われ者ってことは事実なんだろうけどさ」</div>
<div>　霊夢は相手が傷付こうがお構いなしに、さとりに接する。さとりに対しては嘘をつけないのだし、霊夢自身が嘘をあまりつけないということもあり、手厳しく会話をしていた。</div>
<div>「で、何の御用。遠方遥々ここまで地底の引き篭もりがやってくるなんて、明日は雨かしら」</div>
<div>「すみませんね。面倒事を増やすことになってしまって」</div>
<div>「まぁいいわよ、たまになら別に。毎日の如く神社に居座る妖怪どもよりは、よっぽどマシだし面倒事を起こさないから」</div>
<div>　あの鬼、後でただでおかないからな――とその時にさとりは霊夢の心を読んでいた。また伊吹さんと喧嘩でもしてしまったのだろうかと思うさとりだったが、それ以上言及することはしなかった。</div>
<div>「実は&hellip;&hellip;最近、私の妹がどこに行ったかご存じないですか？」</div>
<div>　こいしが一ヶ月以上地霊殿に帰ってこない。元々長期間に渡って、地霊殿に帰らないことは多かったため、その内戻ってくるとさとりは考えていたが、何故か今回は嫌な胸騒ぎがしてじっとしていられなくなっていた。こいしがいなくなる前日に、永遠に会えなくなってしまうのではないか――などと不安になるようなことを考えていたことが原因だということはさとり自身もよく分かっていた。地霊殿で飼っているペット達も心配しており、探しに行こうとするものもいたが、さとりはそれを断り自身で探すことを決意した。</div>
<div>「人里と命蓮寺には行ってみたのですが、目撃したといった情報は得られなくて&hellip;&hellip;」</div>
<div>「うーん、そうね。――そういや、一昨日辺りに魔理沙が霧の湖辺りで見たとか言ってた気がするなぁ。すぐ見えなくなったらしいけど」</div>
<div>「霧の湖&hellip;&hellip;ですか」</div>
<div>　こいしは無意識に放浪するため、どこにいてもおかしくはない。だが、他者との関わりが多くなっていた時期であったため、さとりは意外そうな声で場所の名を呟いた。</div>
<div>「でもさぁ。あんたから妹さん探しに行くなんて珍しいわね。何か喧嘩でもした？」</div>
<div>「いえ、特別何かあったわけではないですが」</div>
<div>「ふーん。じゃあ、気がかりに思うことがあったのね」</div>
<div>「&hellip;&hellip;えぇ」</div>
<div>　さとりは目を伏せるように霊夢から目線を外して、伏し目がちな表情をする。大丈夫かしら、この子――そんな霊夢のぶっきらぼうな言葉でも心配そうにしている心の声が、さとりに伝わってくる。</div>
<div>「霊夢さん。こちらでこいしは、迷惑かけていないですか？」</div>
<div>「ん？　急にどうした」</div>
<div>「いえ。こいしは人に嫌われたくなくて、あぁなってしまったので&hellip;&hellip;最近少しずつあの子の本心というか、自分自身の行動みたいなのが出てきていたんです。特定の方々と交流するとか、こんなに他者から興味を持たれるとか、そんなことは滅多になかったので。少し、心配なんです」</div>
<div>「あー、そうねぇ。基本的にはいい子よ。いっつもへらへら惚けていても、しっかり言うこと聞くほうだし。でも、突然人を脅かしに来たり、よく分からない行動しだしたり、ぼーっとすることがあってね。あれはまるで――」</div>
<div>「まるで、子供のよう――ですか」</div>
<div>　霊夢の話に割りこむようにさとりは答える。本能のみで動くこいしには頭の中で思いついた時には、既に体が動いてしまっている。先のことなんて考えない。心を壊してしまっているこいしを見て、さとりは不憫に思っていた。このまま無となって誰とも接点を持たずに、消えてしまうのではないかと恐れていた。</div>
<div>「まぁ、大丈夫よ。あの子、あんたのことを好いているし。それに、私はもう慣れてるしさ。どうせ、いなくなってしまわないかって心配だったところでしょ」</div>
<div>「そう、ですね」</div>
<div>「私はあんた達のこと、苦手だけどね。お賽銭くれないし」</div>
<div>　霊夢の心を読んだ言葉と同じ声がさとりの耳に聞こえてきた。</div>
<div>「あなたは正直者ですねえ&hellip;&hellip;」</div>
<div>　さとりが飽きれたように答えると、霊夢は得意げな笑顔を彼女に向けていた。</div>
</div>
<div>　</div>
<div>*****</div>
<div>　</div>
<div>
<div>　人々は常に嘘を吐いて生きているわ。</div>
<div>　一点の曇りも無い笑顔を向けても、本心では馬鹿にしているの。</div>
<div>　好意に思っていることが分かったとしても、心を読めたら嫌われ者。</div>
<div>　本心は知られたくない。平気で嘘を吐いて。平気で関わりを持とうとする。</div>
<div>　他者の目を気にして、社会を気にして、自身を意思の首をきつく締めて行く。</div>
<div>　人の心は汚れた言葉のはきだめ。期待した私が馬鹿だったのだわ、と奈落に突き落とされるのよ。</div>
<div>　追い求めていた理想は陽炎のように揺らめいて、私に現実を見せてくるの。</div>
<div>　心が分かって恐ろしい。心を分かってもらえなくて恐ろしい。嫌われるのが恐ろしい。</div>
<div>　だから私は人の目に届かない酷く冷たい錠をかけて、水底にまで沈めて鍵を壊す。</div>
<div>　恋を閉ざして、小石になれば、もう誰も傷付くことはない。</div>
<div>　貴方の嫌いなことに全て蓋をして、誰にも触れられない世界を愛するの。</div>
</div>
<div>　</div>
<div>*****</div>
<div>　</div>
<div>
<div>　太陽は沈みきった頃。さとりは霧の湖に向かって流れ星のように飛行していた。</div>
<div>　霧の湖は昼間になると高頻度で霧で包まれることが多く、視界が悪くなる。夜になると霧は晴れていくため、さとりは月の光をたよりに、こいしがいないか探索し始める。そんなに大きな湖ではないため、もし見つからないのであれば既に別の場所へ移動しているだろうとさとりは想定していたが、湖に到着するとすぐさま水面で仰向けに浮いているこいしの姿をあった。</div>
<div>「こいし！」</div>
<div>　空からさとりは叫んだが、こいしはピクリとも動かなかった。瞳孔が開ききっていて、何の感情も伝わってこない表情をしている様子を見て、予想以上に深刻ではないかとさとりは焦りだした。</div>
<div>　慌ててさとりはこいしの元へ飛ぶと、華奢な体を両手で抱え、岸まで運ぶことにした。</div>
<div>　触れると急にこいしの体は消えてしまいそうなくらい徐々に透けていくことを実感したさとりは、いつも通り帰ってくるだろうと考えていた自分を呪っていた。</div>
<div>「こいし、聞こえる？　私よ、こいし」</div>
<div>　岸まで運び終えると、さとりはこいしの両手を掴んで何度も呼びかける。彼女の心に呼びかける。ノイズばかりで何を思っているのか分からない心を切り裂いて取り除くように、さとりは深く深く潜っていく。すると、蛇のように心の波は大きく蠢いて、さとりを耳障りな音で覆うように襲いかかった。</div>
<div>「うっ&hellip;&hellip;」</div>
<div>　さとりの脳へ迫る無意識の雑音と振動が、小波となって何度も再生される。耐え切れずに倒れてしまうさとりであったが、こいしの両手は握ったまま離さない。</div>
<div>　心を読むことはできなくても、自身の心を――気持ちを伝えることはできると信じて、さとりはこいしの無意識へ立ち向かう。頭を殴られて眼が回ってきても、お腹の中にいる胎児に呼びかける母親のようにさとりは優しく彼女の名を呼んでいた。一度でいいから届いてくれれば、こちらを認識してくれるはずだとさとりは祈り続けた。大丈夫だと何度も何度も呼びかける。</div>
<div>　そして――。</div>
<div>「――ん？」</div>
<div>　こいしの体が急に震えて、ゆっくりと体を起こしだした。</div>
<div>「お姉ちゃん？」</div>
<div>　さとりはようやく声が届いたのだと分かったと同時に、耐え切れずこいしから手を離した。地面にうつ伏せになって、息を整えるために何度も深呼吸を繰り返す。良かった、良かったと呟きながら額を拭って大きく伸びをした。</div>
<div>「お姉ちゃんだ。やっぱり、お姉ちゃんだったのね」</div>
<div>　さとりはゆっくり転がって、仰向けの状態でこいしを見る。いつものような笑顔で、さとりを伺うように見つめていた。</div>
<div>「ごめんね。お姉ちゃん。いつの間にか寝てしまったみたい」</div>
<div>「あんたいつまで寝ているのよ。馬鹿ね」</div>
<div>「えへへ」</div>
<div>　しばらく二人は笑いあって、空に浮かぶ半月を眺めていた。さとりはいつも以上に静かに月を見るこいしの横顔を見て、幻想でも見ているみたいに奇妙な感覚に陥っていた。</div>
<div>　いつも彼女のことを見ているのに、まるで夢の中から出てきたように儚い存在にさとりは思う。覚りの目を閉ざしてから、こいしは外に出かけるようになり、二人でのんびりする時間も減ってしまって、さとりは少しずつだけど彼女に変化を感じるようになっていた。</div>
<div>「ねぇ。お姉ちゃん」</div>
<div>　こいしは月を見上げたまま、さとりに語りかけた。</div>
<div>「なに？」</div>
<div>「私さ、人里で仲良くなった人間の子がいたんだ。何度かあっている内に、あっちも私のことをよく認識するようになってね」</div>
<div>　こいしはネジ巻き人形のように、感情が壊れてしまったように淡々と声を絞り出していた。表情がいつも通りぼーっとしているのを見ると、実の妹だとしても少しだけ恐ろしく思えた。ましてやさとりは彼女の心を読めない。さとりにとってこいしと関わるということは、唯一抵抗もできずに無防備な状態を晒したままということになる。それでもさとりは姉として、こいしのことを見捨てたりすることはなかった。</div>
<div>「でもね。私が妖怪だと知ると、急に怖がって逃げちゃったの」</div>
<div>「まぁ、妖怪好きの人間なんてそうそういないからね」</div>
<div>「その後ろ姿を見てたら――いつの間にかこんなところにきたみたい。本当によく分からない内に体が動いちゃうのは困りものだね&hellip;&hellip;」</div>
<div>　さとりは人里で心を読んでこいしのことを知っている者がいなかったことを思い出す。もし、仲良くしていた子がその中にいたのであれば、きっとこいしを忘れてしまったのだろう。さとりはその人間に対する憎しみと悲しみを自身の中に抑え込んで、こいしの話に返答する。</div>
<div>「そうね――困った妹を持ってしまったものだわ」</div>
<div>「ごめんね。お姉ちゃん」</div>
<div>　いつもと変わらないトーンだが、普段と違って鈴を振るような声で謝ったようにさとりは感じた。珍しいものをみたかのようにさとりは不思議そうにこいしを見た。</div>
<div>「あんた、泣いているの？」</div>
<div>　こいしは腕を包むほど長い袖を振って右手をだすと、頬にその手をぺたりとつけた。こいしは眉一本も動かさずに、自身でも理解できないのか首を傾げた。</div>
<div>「本当だ。何で涙が出ているんだろうね」</div>
<div>「自分のことだから、よく考えるといいわ」</div>
<div>「何でだろうねえ。感情が無いからよく分からないよ」</div>
<div>　頬から流れた水滴の正体を探るように、こいしは奇妙だと思っているのか何度も指先でこすった。さとりはそれを見ていると、心底呆れ返って彼女に気付かないように笑っていた。こいしの覚りの目がやはり変化しているのだと確信し、満天な星空を眺めて呼吸をする。空気は清く生きていることを改めて実感するような、そんな味をさとりは深く味わっていた。</div>
</div>
<div>　</div>
<div>*****</div>
<div>　</div>
<div>
<div>　ただ一人で落ちてゆく何処かも分からない孤独の宇宙に、お姉ちゃんはいつも突然現れる。</div>
<div>　きっと何億光年離れていようとこうやって私の手を繋いできて、夢の中で溺れそうな私の心に息を送り込むの。</div>
<div>　生命の音が聞こえる。心地の良い血潮の流れ。ここにいるという実感。</div>
<div>　心の中に潜んでいた訳の分からない嵐を吹き飛ばしてゆくの。</div>
<div>　――もし、私が本物の世界で保っていられるのなら。</div>
<div>　いつか閉ざした恋の色で、この世界を自分の手で本物として塗り替えたい。</div>
<div>　私が愛おしく包んだまどろむ旅の果てで、私は私を待っている。</div>
</div>
<div>&nbsp;</div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>【東方二次創作】小説作品</dc:subject>
    <dc:date>2016-05-21T17:36:38+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
  </item>
  <item rdf:about="https://whiteapple.side-story.net/%E3%80%90%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%80%91%E9%95%B7%E7%B7%A8%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E7%9B%AE%E6%AC%A1%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8/%E7%9E%B3%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%8D%AE%E3%81%88%E3%81%A6%20%E7%9B%AE%E6%AC%A1%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8">
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    <title>瞳を見据えて 目次ページ</title>
    <description>人見知りの女の子が、目の病気を持つ子と友達になる話。


【長編】瞳を見据えて その1
【長編】瞳を見据えて その2
【長編】瞳を見据えて その3
【長編】瞳を見据えて その4
【長編】瞳を見据えて その5
【長編】瞳を見据えて その6
【長編】瞳を見据えて その7
【長編】瞳を見据えて その8
【...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>人見知りの女の子が、目の病気を持つ子と友達になる話。</div>
<br />

<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/31/" title="">【長編】瞳を見据えて その1</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/32/" title="">【長編】瞳を見据えて その2</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/33/" title="">【長編】瞳を見据えて その3</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/34/" title="">【長編】瞳を見据えて その4</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/36/" title="">【長編】瞳を見据えて その5</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/39/" title="">【長編】瞳を見据えて その6</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/40/" title="">【長編】瞳を見据えて その7</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/41/" title="">【長編】瞳を見据えて その8</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/42/" title="">【長編】瞳を見据えて その9</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/43/" title="">【長編】瞳を見据えて その10</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/44/" title="">【長編】瞳を見据えて その11</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/45/" title="">【長編】瞳を見据えて その12</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/46/" title="">【長編】瞳を見据えて その13</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/47/" title="">【長編】瞳を見据えて その14</a></div>
<br />

<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/" title="">TOPページヘ</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>【オリジナル】長編小説目次ページ</dc:subject>
    <dc:date>2015-11-08T23:44:19+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
  </item>
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    <title>鬼狼の物語 目次ページ</title>
    <description>人に興味を持つ鬼と女の子が旅する話。


 【長編】鬼狼の物語　其の１
【長編】鬼狼の物語　其の２
【長編】鬼狼の物語　其の３
【長編】鬼狼の物語　其の４
【長編】鬼狼の物語　其の５
【長編】鬼狼の物語　其の６
【長編】鬼狼の物語　其の７
【長編】鬼狼の物語　其の８
【長編】鬼狼の物語　其の９


...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>人に興味を持つ鬼と女の子が旅する話。</div>
<br />

<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/2/" title=""> 【長編】鬼狼の物語　其の１</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/3/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の２</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/4/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の３</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/5/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の４</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/6/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の５</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/7/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の６</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/8/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の７</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/9/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の８</a></div>
<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/10/" title="">【長編】鬼狼の物語　其の９</a></div>
<br />

<div><a href="http://whiteapple.side-story.net/" title="">TOPページヘ</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>【オリジナル】長編小説目次ページ</dc:subject>
    <dc:date>2015-11-08T23:34:41+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
  </item>
  <item rdf:about="https://whiteapple.side-story.net/%E9%95%B7%E7%B7%A8%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%90%E9%95%B7%E7%B7%A8%E3%80%91%E7%9E%B3%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%8D%AE%E3%81%88%E3%81%A6%20%E3%81%9D%E3%81%AE14">
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    <title>【長編】瞳を見据えて その14</title>
    <description>　待ち焦がれていた彩月からの連絡。いざ、メールが来ると首を締め上げられている気分になる。彩月のメールに対して会うことは大丈夫だと返信したら、矢口さんが迎えに来るようにお願いする、と返ってきた。
　当日。授業後に校門へ向かうと、彼女の言う通り病院まで送迎すると矢口さんがやってきた。何も考えずにうっかり...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>　待ち焦がれていた彩月からの連絡。いざ、メールが来ると首を締め上げられている気分になる。彩月のメールに対して会うことは大丈夫だと返信したら、矢口さんが迎えに来るようにお願いする、と返ってきた。</div>
<div>　当日。授業後に校門へ向かうと、彼女の言う通り病院まで送迎すると矢口さんがやってきた。何も考えずにうっかり人の車に乗ってしまったが、流石に家に帰れない事態にはならないだろうと深く考えないことにした。丁寧な運転で車内だと言うことを忘れてしまいそうなほど、揺れを感じられなかった。</div>
<div>　これから彩月に何を言われるのだろうと、車の中で想像する。以前、矢口さんと話したこともあり、クラス中に広まった目の噂は私のせいではないことは気付いていると思う。そうでなくても、ありのまま隠さずに事情を話せば良い。あなたが思っているほど、臆病になる必要はないのだと。</div>
<div>　運転をしている矢口さんから話しかけられることはなかった。敢えて何も助言をしなかったのかもしれない。私自身が正直に気持ちを伝えることで、彩月が安心すると信じていているのだろう。</div>
<div>「着きましたわよ。笹木さん」</div>
<div>　病院へ到着すると、矢口さんが後部座席のドアを慣れた手つきで開けてくれた。病院内へ入り、エントランスから受付を済ませると、看護師から面会者であることを示す紐付の名札を手渡された。それから彼女の病室まで五分ほどだろうか。結構歩いた気がする。不気味なくらい静かな病室は、たまに聞こえる足音と医療器具を運ぶ車輪の音しか聞こえてこない。気味の悪い感覚が身体に纏わりついた気がして、少し怖かった。</div>
<div>「さぁ、嬢さまの病室はあそこです」</div>
<div>　一緒に歩いていた矢口さんが立ち止まって、病室のドアを指差した。</div>
<div>「これ以上目を悪くしないために、照明の明かりは薄暗くなっています。お気をつけて」</div>
<div>「分かりました。矢口さん、ありがとうございます」</div>
<div>　矢口さんは嬢さまをよろしくね、と私に向かってウインクしてみせた。そして、矢口さんは近くの座椅子に目線を移して、そこで休憩していますねと付け加え、私の傍から離れていった。</div>
<div>　よし、やるか。と、私は覚悟を決めるように両手で顔を叩いて、気合を入れる。病室のドアを二回ノックすると、どうぞとかすかに声が返ってきた。ドアを開けると矢口さんの話した通り、病室内は薄いオレンジ色の照明で暗かった。ベッドの周りにはカーテンが仕切られていて、そこに彩月がいると思うと余計足が震えてきた。</div>
<div>「彩月。私だよ」</div>
<div>「理沙ちゃん？　もう来たんだ。いらっしゃい」</div>
<div>　久しぶりに彩月の声を聞いて、内側から込み上げてくるものがあった。ゆっくりとカーテンが何度か動いたり止まったりを繰り返して少しずつ開いていく。やがてカーテンの袖を掴んで一生懸命動かそうとしている彩月の姿が見えた。私はその姿を瞬間、息を呑んだ。すぐさま彩月の元まで駆け寄って、代わりにカーテンを開ける。</div>
<div>「御免ね。全然分からなくて&hellip;&hellip;。メールも矢口さんに打ってもらってたの」</div>
<div>　彩月の目には包帯が何重にも巻かれていて、何も見えていない状態となっていた。本当に彼女は自分で目を焼いたんだと、私は改めて認識して身震いを起こした。</div>
<div>「馬鹿だね。その目を嫌ったところで、何かが変わるわけじゃないよ」</div>
<div>「&hellip;&hellip;そう、みたいだね」</div>
<div>　寂しそうに彩月は呟いた。私は彩月を無理させないようにベッドへ寝かせた。彼女の動きは鈍く、あまり身体を動かしていないのではないかと感じた。まだ外に出られるほど回復していないようだ</div>
<div>「理沙ちゃん。御免ね。ずっと連絡しなくて」</div>
<div>「いいんだ。私もずっと相談に乗れなくて御免ね」</div>
<div>　いつものようにえへへ、っと笑ってみせる彩月だったが、私の心はとても傷んでしまった。私はずっと後悔をしていたんだ。彩月がこんなに傷ついていたのに、私は今まで待つことしか出来なかったのかと。本当だったら矢口さんに押しかけて、無理やり面会しに来るべきだったのではないかと、今更になって痛感していた。</div>
<div>「話があってここに呼んだの。私、引っ越すことになるかもしれない」</div>
<div>　突然の彩月からそう告げられ、私は心底驚いてしまった。</div>
<div>「もう、戻ってこないの？」</div>
<div>「私が自分で目を駄目にしてしまいそうになったじゃない？　だから、両親が心配してきたの。元々私の我儘で今の学校に入学したんだから、そりゃそうだよね。私もね。噂が流れてしまった以上、この学校でやっていけないんじゃないかなって&hellip;&hellip;。入学する前に、先生達にも赤い目のことは全部黙っていて欲しいって頼んでいたのだけど、もう意味も無いの&hellip;&hellip;」</div>
<div>「そう、なんだ」</div>
<div>　私は戸惑いながら、このまま何も言わずに彼女を行かせたほうが、幸せなんじゃないかと考えていた。彼女ならきっと他のところへ行ったって、うまくやっていける。また誰も彼女が知らないところでやり直すほうがいいのではないか。その目を隠し続けて、普段通り楽しい生活を送る――。</div>
<div>　&hellip;&hellip;いや、違うだろ。</div>
<div>「行かないで、彩月」</div>
<div>「理沙ちゃん」</div>
<div>「私、あなたと友達でいたいの。一緒にいたい。この先、私はあなたがその目で苦しまないように、本心であなたが好きだと思える人達と一緒になれるように、手助けをしたいの。友達としての役割を果たしたいんだ。勝手なことを言っているかもしれないけど、私はそうしたい」</div>
<div>　私がそう伝えると、彩月は黙ってしまった。これが私の本心だった。私はこの本心が彩月を思っての行動なのか、よく分からなかった。ただ、私がこのまま彩月と別れるのが嫌という、それだけの話だった。今まで愛想良く人と接することしか出来なかった私が、彩月や桃香や矢口さん、そして栗谷さんと色んな人達を関わって変わろうとしている。</div>
<div>　私は彩月に憧れていて、ずっと友達になりたいと思っていたんだ。彩月と本当に仲良くなりたい。私のことを彩月が友達と呼んでくれるまで、そんな立場の人間ではないと思っていた。迷惑になるだけだからって、隠してきた。でも、彼女は赤い目がばれた日に私のことを友達と言ってくれた。私は薄情で自分勝手な人間だ。それでも、初めて誰かのために頑張ってみたいと動き出したんだ。</div>
<div>「彩月。聞いてほしいの。彩月の目についての噂。噂を流した張本人と話してきたの。あなたが思うほど、恐れる必要は無かったんだよ」</div>
<div>　私は栗谷さんから話を聞き出したこと全てを彩月に伝えた。桃香から話を聞いたことも、栗谷さんが謝罪をしていたことも、クラスの皆がずっと知らないふりをして彩月に接してくれていたことも。全て話した。</div>
<div>ずっと彩月は黙って聞いていて、私が話し終わってもしばらく俯いていた。私は何も言わず、彩月の考えが纏まるまで待ち続けていた。静まり返った病室は、私が唾を飲み込む音さえ聞こえてきそうな気がした。</div>
<div>「そっか。結局、皆は私のことを気にかけてくれていたんだね&hellip;&hellip;」</div>
<div>　彩月が静かに話し出したかと思うと、何故かクスクスと笑い出した。目は包帯で巻かれていて、どんな表情をしているのか伺えないが、口元は綻んでいる様子が見えた。</div>
<div>「確かにそうだよね。ずっと皆知ってたはずなのに、あんなに楽しく学校にいられたんだもん」</div>
<div>「彩月&hellip;&hellip;」</div>
<div>　彩月はふふふって優しい声で笑って、両手の指同士を弄り始めた。</div>
<div>「あのね、理沙ちゃん。私、昔に失明しそうになって治療したことあるって言ったでしょ？　あれね、中学にいたクラスの子達のせいなの。私は自分の目が綺麗だって、小学生の頃から皆に言われててね。でも、中学になって面白がって嫌なことを言ってくる子達がいたの。バケモノだ、とか、呪われてしまうぞ、って。私もあの頃はその子達に反抗していて、それが駄目だったんだよね。誰もいなくなった放課後にね、教室に呼び出されたの」</div>
<div>「彩月。いいよ。辛い話なんでしょ」</div>
<div>　私は彩月の話を止めようとした。本当は私がこれ以上聞きたくなかっただけだ。でも、彩月は首を横に振って、やはり口元は笑ったまま私に言った。</div>
<div>「いいの。この話も今日、理沙ちゃんにしたいって思ってたの。知ってほしい」</div>
<div>「彩月&hellip;&hellip;」</div>
<div>「なんだろうね。本当はお別れするための口実にするつもりだったのに、理沙ちゃんに頼りたくなっちゃった」</div>
<div>「&hellip;&hellip;」</div>
<div>「&hellip;&hellip;教室に呼び出された私は、両手両足を拘束されてね。別の子が手鏡を持って、教室の外から差し込む夕日を反射させて、私の目に当ててきたの。今思い出しても、身体が震えてしまうくらい、痛かったし怖かったよ。泣き叫ぼうにも暴れようにも押さえつけられて、目も無理やり指でこじ開けさせられるし、手鏡はずっと私の方に向いているし。相当私が気に食わなかったんだと思う。結局それが原因で、その子達は退学になったんだ。本当にここまで酷くなると思ってなかったのかもね。私の目から血が流れ始めた時に、びっくりしてその子達どこかに行ってしまったんだもの」</div>
<div>　私は目頭に溜まりだした涙が溢れ出ないように堪えていた。彩月を酷い目に合わせた奴らを、同じように酷い目に合わせてやりたいと思った。</div>
<div>「やり直したかったんだよ。全部。知らないところにくれば何かが変わるかもしれないって期待して、頑張りたかった。向こう側に全てあの時の私を置いてきて&hellip;&hellip;えっと、何だろう。そう、普通に女子高生したかった」</div>
<div>　二人でショッピングをした時に、彩月はそう言っていた。過去のことは全部終わらせて、変わろうと必死に食らいついていたんだ。どんなに辛い過去があっても、自分を信じて頑張っていたんだ。</div>
<div>「だからね、今回も同じことになってしまうのなら、目を無くしてしまえばいいんだって思ってしまったんだ。不謹慎なことを言うのだけど、これは初めて失明しかかった時にも思っていたの。こんな目を潰してしまえば、もう何も怖いものは無くなるし、見えなくなるんだって」</div>
<div>「やっぱり、そんな風に思っていたんだ」</div>
<div>　こうして、彩月は自己犠牲を選んだ。相手に強く当たることの出来ない子だから、相手を大切に思いやるようにしていた子だから、彼女は最も誰も傷つかない道を選ぼうとした。目を無くすことによって、クラスの子達に攻撃されないようにしようと考えた。</div>
<div>「でもね。私、馬鹿だよね。今、何も見えなくなった状態だから分かるの」</div>
<div>「何さ」</div>
<div>「相手の表情が分からなくなっちゃうのが、とても寂しいの。今だって、理沙ちゃんのことが何も見えてないの。私に優しく微笑んでくれて、おかしく笑ってくれるあの顔が、今は見えないんだ」</div>
<div>「そりゃそうだよ。馬鹿なこと言ってるんじゃないよ」</div>
<div>「えへへ。ありがとね、理沙ちゃん私のためにこんなにいっぱい頑張ってくれて」</div>
<div>　彩月がその台詞を言った瞬間、私の心が大きく揺さぶった。本能が私に狂ったように話しかけてくる。違う違う違う違う違う違う――ずっと頭の中で流れ続けて、気がおかしくなりそうだ。涙が溢れ出てきて、頬を伝わっていく。本心が叫んでいる。感情の叫びが喉元までやってきて、私はそれに耐え切れなかった。</div>
<div>「違うんだ。彩月。違うの」</div>
<div>「理沙ちゃん？」</div>
<div>「彩月を助けようと私は動いたのだけど、本当はあなたのことを考えてなかったのかもしれない。ずっとずっと自分の中にあるもやもやを消そうと必死になっていた。自分の中にある怒りを無くそうとしてたの。彩月が走って、校内を出て行く時に追いかけなかった自分が憎い。彩月を陥れた奴が憎い。探し当てた犯人も、私の怒りをぶつけるにはあまりにも悪意が無かった。きっと私は&hellip;&hellip;私のためにしか動いてなかったんだ。自分が傷つくのを恐れていたし、本当に彩月のために動こうとしていたのかも分からないんだ。助けようとしている自分を好きになろうとしているだけだったのかもしれない。彩月のことを利用していたのかもしれない。そう考えると&hellip;&hellip;無性に腹が立って仕方ないんだ。私は&hellip;&hellip;私はさぁ、彩月。&hellip;&hellip;本当はあなたに、あなたに一歩も&hellip;&hellip;一歩も、近付こうとしていなかったんだよ&hellip;&hellip;」</div>
<div>　最後は嗚咽混じりで、自分でも何を言っているんだと情けない気持ちになっていた。本当は辛いのは彩月なのに私が泣いてしまって、こんな時にまで私は私のことしか考えていないのかって、そんな惨めな気分になった。</div>
<div>「理沙ちゃん、泣いているの？」</div>
<div>「&hellip;&hellip;違うよ、違うの」</div>
<div>　私は溢れる涙を手で拭っていると、彩月が私の方へ両手を伸ばしてきた。</div>
<div>「手、握ってもいい？　見えないと、不安になっちゃうの」</div>
<div>　私は涙で濡れた手を袖で拭って、右手を差し出した。彩月は両手で私の手を掴んで、ふふふってまた笑っている。</div>
<div>「馬鹿だなぁ、私。こんなに思いやってくれている人がいるのに、何も相談しなかったなんて」</div>
<div>「そんなんじゃないよ、私」</div>
<div>「そんなことないよ。約束、ちゃんと守ってくれたでしょ？」</div>
<div>「約束？」</div>
<div>「目のことを話したら、絶交だかんね――ってね？」</div>
<div>　楽しそうに彩月はそういった。彼女はそれが堪らなく嬉しかったのか、私の手をぶんぶんと揺さぶっていた。そうだ、そうだったね。私はその約束を当たり前のように受け入れていて、忘れてしまっていたよ。この子にとってはとても大事な事だったんだ。</div>
<div>嬉しそうにしている彩月見ていたら、何だか私も笑いがこぼれてきた。彼女の傍にいると本当に心地の良い気分になった。</div>
<div>「そういえば、彩月に聞きたかったことがあるの」</div>
<div>　私は唐突にずっと彩月に聞きたかったことを思い出して、彼女に話しかけた。</div>
<div>「なぁに？」</div>
<div>「私、そろそろ髪を切りたいって思っているんだけど、どう思う？」</div>
<div>「え、駄目だよ！　あんな綺麗な長い髪なのに、勿体無いよ！」</div>
<div>　&hellip;&hellip;こりゃ参った。待つべきだったかな。</div>
<div>「御免。もっと早く聞くべきだったね」</div>
<div>「えっ？　えっ？」</div>
<div>　私は自分の頭を挟ませるように彩月の両手を持っていってあげる。すると、彼女は慌てた様子でさわさわと私の髪を撫で始めた。</div>
<div>「うわー！　短くなってるー！」</div>
<div>　私はしばらく泣くほど大笑いしていた。こりゃ本当に参った。待つことも大事なことだったりするんだなって。</div>
<br />
<br />

<div>　彩月が入院して、三ヶ月。突き刺すような真っ赤な暑い太陽は、月日が経つにつれてぬくい日差しになっていた。通学路にある木々の葉は、黄色から赤みがかっている。</div>
<div>　スカートの下を吹き抜けていく風が冷たい。ソックスを履いたところで、膝上は素足のままなんだ。それはもうブルブルと震えてしまう。何故女子はズボンを履いてはいけないのかと、男子高生を見ながら恨めしそうに思っていた。</div>
<div>「理沙ちゃんおはよう〜」</div>
<div>　大通りの信号が青に変わるのを待っていると、背後から聞き慣れた声がした。桃香だ。</div>
<div>「あ、おはよう。桃香」</div>
<div>「うんうん。おはよう」</div>
<div>　信号が青に変わると、桃香と一緒に信号を渡る。いつもより気分がいいのか、鼻歌交じりで私の横をゆらゆらしながら歩いている。無理もない、私も今日はふわふわとした気分だ。</div>
<div>「なんだか嬉しそうですね？」</div>
<div>　何故嬉しそうなのかは分かりきっているのだけど、私は桃香に話を振った。</div>
<div>「えー。今日は何の日か、あなたも分かっている癖に～」</div>
<div>　桃香も私の気持ちを見透かしていたみたいだ。そりゃ嬉しくもなる。今日は、彩月が学校に戻ってくる日だからだ。彩月からメールで連絡来た日は、すぐに桃香に知らせている自分がいた。彼女も彩月のことを気に入っていたものだから、電話越しで本当に嬉しそうにはしゃいでいた。</div>
<div>　やがて校門が見えてきて、久しぶりに矢口さんの車が見えた。矢口さんは私に気づくと、ゆっくりとお辞儀をしてきた。そして、日傘をさすと後部座席のドアを開けに行く。</div>
<div>「いってきなさいな」</div>
<div>　私は桃香に背中を押され、校門まで走った。地面へ落ちていく紅葉の横を、私は流れるように通り過ぎていく。心が高まり、額に汗を浮かんでくる。数メートル先なのに、走っている間はとても長く思えた。</div>
<div>私が校門前に着くと、後部座席から一人の女子生徒が降りてきて、日傘を受け取った。私の前に経つと、彼女は私をじっと見つめてきた。私はこの先にどんな辛いことがあろうと自分に正直でいられるよう、彼女の瞳をしっかりと見据えて、ただ一言伝える。</div>
<div>「おかえり、彩月」</div>
<div>「ただいま、理沙ちゃん」</div>
<div>　彼女の赤い瞳は、柔らかな陽だまりのように優しく輝いていた。</div>
<br />

<div style="text-align: right;">おしまい</div>
<br />

<div style="text-align: right;"><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/46/" title="">前の話＜その13＞</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>長編小説</dc:subject>
    <dc:date>2015-11-08T22:57:23+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
  </item>
  <item rdf:about="https://whiteapple.side-story.net/%E9%95%B7%E7%B7%A8%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%90%E9%95%B7%E7%B7%A8%E3%80%91%E7%9E%B3%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%8D%AE%E3%81%88%E3%81%A6%20%E3%81%9D%E3%81%AE13">
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    <title>【長編】瞳を見据えて その13</title>
    <description>　授業が終わると、私は人の気配が無い体育裏にやってきた。古い木々が生い茂り、夕日を遮っている。ここには体育用具を取り出せる倉庫の入り口があるが、道は平坦ではなく石が転がって足場が悪く、ドアが開けられた様子は殆ど無い。結果、正面口から用具を取り出せば済む話になり、人通りの少ない場所となっていた。まぁ、...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>　授業が終わると、私は人の気配が無い体育裏にやってきた。古い木々が生い茂り、夕日を遮っている。ここには体育用具を取り出せる倉庫の入り口があるが、道は平坦ではなく石が転がって足場が悪く、ドアが開けられた様子は殆ど無い。結果、正面口から用具を取り出せば済む話になり、人通りの少ない場所となっていた。まぁ、たまにここで煙草を吸っている馬鹿な生徒もいるみたいだけど。こんなところで男子に告白されるものなのかなとか、好みな先輩のことを頭の片隅で思い出してしまったが、現実はそんなに甘くないよなと溜息をつく羽目になってしまった。それに、今から話すことはそんな嬉しいものではない。まだまだ人生は先が長いというのに、辛いものだ。</div>
<div>　木々の間から差し込む夕日は綺麗だった。夏もすぐそばまで来ているようで、遠くで蝉の鳴き声が響いている。私は気を紛らわせるため、地面に落ちている石ころを手にとって、数メートル先の老木に向かって投げてみた。石は老木の左側に少しそれ、かするようにして当たった。また、私は溜息をつく。落ち着こうと思えば思うほど、胸の鼓動が早くなる。人見知りの私にとって見ず知らずの人と正面切って話すことが、どれだけ嫌か分かっているつもりだった。</div>
<div>「落ち着くんだ。私」</div>
<div>　そうやって何度も呪文のように呟いて、相手が来るのを待っていた。</div>
<div>「笹木さん&hellip;&hellip;いますか&hellip;&hellip;？」</div>
<div>　私が気持ちを落ち着かせていると向かい側の通路から、一人の女子生徒が恐る恐るやってきた。私の全く知らない生徒だったが、上級生といった感じではない。彼女はこちらに気付くと、姿勢正しくして私の方へ歩いてきた。私は近寄ってくる相手を驚かさないように、眉一つも動かさずに彼女がそばへ来るのを待っていた。彼女は私の近くまで来ると、眼鏡をかけ直して私の目を見つめてきた。</div>
<div>「私、1年C組の栗谷静（くりやしずか）と言います」</div>
<div>「栗谷さん&hellip;&hellip;隣のクラス子ね。御免なさい、こんなところに呼び出してしまって」</div>
<div>「いえ、それより笹木さんに謝りたいことが沢山あるんです。順を追って、説明させてくれませんか？」</div>
<div>「&hellip;&hellip;えぇ、お願い」</div>
<div>弱々しく話し始める彼女を見て、私は拍子抜けしていた。こんなか弱い女の子が、本当に彩月を陥れるようなことをしたのか、と。胸の中が更にもやもやとし始める。</div>
<div>「天野さん、なんですけど。私たちのクラスでもよく知れ渡っていた人なんです。元気で明るくて、優しくて。時々、私達のクラスに遊びに来ることもあって、同じ学年の子だけど、あの人のことを尊敬していました。それで私、従姉妹にも素敵な女の子が同学年にいるんだって話したことがあるんです。そしたら、従姉妹の後輩だったことが分かって&hellip;&hellip;これが送れてきたんです」</div>
<div>　彼女は自分の携帯を取り出して、従姉妹から添付されて送ってこられた写真を私に見せてきた。あの時、桃香に見せてもらった時の卒業アルバムの写真だった。</div>
<div>「従姉妹は仲の良かった後輩からその写真をもらったらしいんです。最初のうちは私もクラスの子達とこのことを面白がって見せたり送ったりしていました。その内、段々何で天野さんはそのことを隠しているのか気になって、私、直接聞いちゃったんです。そしたら凄い顔をして、こっちを見て、どこで知ったのかって色々と質問されてその&hellip;&hellip;」</div>
<div>「何で天野さんはコンタクトレンズで目のことを隠していたのに、彼女が触れて欲しくないことだったって思わなかったの？」</div>
<div>「それは、その&hellip;&hellip;」</div>
<div>「ねぇ、どうして？」</div>
<div>「&hellip;&hellip;桃香ちゃんにも言われました。私はただ、興味があって天野さんに聞いてしまったんです。触れて欲しく無いことかもしれないというのは承知の上でした。それに――」</div>
<div>「それに？」</div>
<div>「伝えたかったんです。あんな宝石のような綺麗な目をしていたから。過去に何があったか私は知りません。けど、周りにバレないようにずっと隠す必要なんてないって、伝えたかった」</div>
<div>「それは&hellip;&hellip;それは、あなたの勝手な意見じゃないの？」</div>
<div>「そうです。天野さんの気持ちを分からないまま、私が勝手にしたことです。私が勝手に望んだことだったんです。平穏であればよかった。目についても自分一人で知らないふりをしていれば良かった。それで天野さんは幸せだったのかもしれないと。でも、彼女は本心で話せていない時があったように思うんです。もっと誰かと遊びたそうにしていても、すぐにどこかに行ってしまう。人と関わり過ぎたら行けないと思っているかのように。だけど、これは私が間違っていた」</div>
<div>「&hellip;&hellip;栗谷さん」</div>
<div>「だから、全部私が悪いんです。こんなことになったのも、全て私が悪い。天野さんにも、天野さんと仲の良かった笹木さんにも謝りたいって思っていました。でも、私は勇気が無かったんです。何も知らないふりして、ずっと黙っていて、このまま何事も無く終わってくれたら良いのにとか、そんな都合のいいことを思っていたんです。そんな時に、笹木さんに呼ばれた」</div>
<div>　彼女は真っ直ぐ私の目を見て語り明かした。栗谷さんは必死に涙をこらえながら私を見つめている。この人のせいで、彩月が目を焼くことになってしまった原因だと分かっていても、私はこの子に怒りをぶつける必要が無いのではないかと思っていた。人は触れてはいけないと分かっていても、好奇心によって動いてしまうことがある。</div>
<div>「最近、あんまり絡まなくなっちゃったね。御免」</div>
<div>　そうだ。私も彩月の目について口走ったことがある。あの日、もし彼女の精神が不安定だったのなら、今と同じ結末になっていたのだろうか。そしたら私は立ち直れたのだろうか。素敵な目をしているのも分かるし、隠す必要無いとも言いたかった。過去に何があったのか、興味もあった。知りたかった。ずっと、知りたいと思った。話すと今の関係が崩れてしまうって恐れていたんだ。それをこの子が、全て壊してしまった。</div>
<div>「だからね、理沙。何事も恐れずに自分に思った通りに行動してもいいんだよ。君が正しいと思うのなら。後悔するぐらいならね」</div>
<div>　パパの話を思い出す。私と同じように、この子は正しいと思って行動したのだろうか？　ずっと一人で悩んでいた彩月を助けたかった。ただそれだけの行動だった。私もそうしたいと思っている。私は&hellip;&hellip;栗谷さんをどうしたいんだ。</div>
<div>　私は全てを知って、その後&hellip;&hellip;何がしたかったんだ？</div>
<div>「笹木さん、本当に御免なさい。謝って許されることではないと思う。だから&hellip;&hellip;」</div>
<div>「――分かった。栗谷さん、この話はもういいよ。御免なさい」</div>
<div>　それから、私の決断は早かった。私にはこれ以上叱る資格と話を続ける自信が無かった。私は決して栗谷さんの行動が許されるとは思わないが、勇気のいる行動だった。</div>
<div>「栗谷さん。話してくれてありがとう。私はあなたの行動が正しかったと思わない。あなたに悪意が無かったとしても、やってしまったことは取り返しがつかない。噂というのは連鎖していくものだから」</div>
<div>「はい」</div>
<div>「だから、天野さんが帰ってきたら、ちゃんと謝ってね」</div>
<div>「はい。本当に御免なさい&hellip;&hellip;」</div>
<div>「いいの。こっちも怖がらせてしまって御免なさい。私がちゃんとあの子に話してくる。後は私に任せて」</div>
<div>　私はハンカチで栗谷さんの目に溜まっていた涙を拭いてあげて、抱きしめた。わんわん泣き出すかと思ったが、栗谷さんは最後まで泣くことはなかった。</div>
<div>　栗谷さんと別れると、私は教室に鞄を取りに向かっていた。いざ一人になると色んな思いが、私の頭の中でレコードのようにぐるぐると回転し始めて鳴り響いた。</div>
<div>　結局、私は何をしたかったのか。全て栗谷さんが悪かったのだろうか。</div>
<div>　彩月に投げつけられたのは、悪意なき悪意だった。彼女が予想していなかった結末だ。</div>
<div>　自身が好いた人間に対して、救いの手を差し伸べたくならないはずがない。</div>
<div>　勇気を出して栗谷さんは行動したけれど、彩月にとっては刺し殺そうとしてくる人間に見えてしまった。</div>
<div>　栗谷さんは気付いていた。彼女が本心で人と関われないことを。</div>
<div>　何か起こることを怖がって、友達との関係を築かないことを。</div>
<div>　走って校舎を飛び出した時。私は見ていたはずだ。彼女が酷い顔をしていたのを。</div>
<div>何故私は彼女の後を追わなかったんだ。何故待ち続けてしまった。</div>
<div>　私は恐れていた。本心を探ることで嫌われてしまうのではないか。今の関係が崩壊してしまうのではないかと。</div>
<div>　たまたま知ってしまった秘密事一つで、彩月にとっての特別になったと思い込んでいたんだ。</div>
<div>　私の中にあるもやもやしたものは未だに残っている。</div>
<div>　全て栗谷さんが悪いのではないかと思っていた。思い込もうとしていた。</div>
<div>　だったら、だったらこの。このどうしようもない怒りはどこにぶつければいい！</div>
<br />

<div>　握った拳を思いっきり壁にぶつけていた。コンクリートの壁だったせいで、衝突音は聞こえなかったが、痺れるような痛みが右拳から腕にかけて広がっていった。私はどうしようもない気持ちを抑えきれなかった。頭の中で流れていた私の思いが詰まっていた曲は止まった。あぁ、そうか。私の中にあったこのもやもやは、どうすることもできない現状に対する怒りだったんだ。自分が何もできなかったことに対する怒りだ。それを栗谷さんに全部ぶつけるつもりだった。でも、それは悪意なき悪意によって放たれることはなかった。</div>
<div>　今になって私は、彩月のことを何一つとして心配していなかったのではないかと思う。彩月のために私は動き出したはずが、全てこの胸の中にある私の怒りを収めようとしたかっただけなんじゃないかって。</div>
<div>だとしたら何て私は愚かな人間なんだって、かさぶたの剥がれた右拳を左手で抑えながら、その場で立ち尽くしていた。</div>
<br />

<div>　気持ちを落ち着かせて拳を抑えながら教室に戻ると、誰一人も残っていなかった。鞄に教科書を収納して、こそこそと携帯を取り出して見ると、久しぶりに見る名前がモニタ上に表示されている。彩月から連絡が来ていた。</div>
<div>　連絡が遅くなって御免なさい。明日、学校が終わったら会えない？　話したいことがあるの――と書かれていた。</div>
<br />

<div style="text-align: right;">続く</div>
<br />

<div style="text-align: right;"><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/45/" title="">前の話＜その12＞</a></div>
<br />

<div style="text-align: right;"><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/47/" title="">次の話＜その14＞</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>長編小説</dc:subject>
    <dc:date>2015-11-02T03:03:28+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
  </item>
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    <title>【長編】瞳を見据えて その12</title>
    <description>　暗闇の中で、コンコンと二回音が鳴った。私の部屋の扉を叩く音。
「理沙。入っても良いかい？」
　音に続いて、パパの声が聞こえてきた。私はじっとベッドの上で座り込み、一呼吸おいてから「どうぞ」と答えた。パパがドアを開けると、廊下の光が差し込んで私を照らした。パパとは目線は合わせないように、そっぽを向い...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>　暗闇の中で、コンコンと二回音が鳴った。私の部屋の扉を叩く音。</div>
<div>「理沙。入っても良いかい？」</div>
<div>　音に続いて、パパの声が聞こえてきた。私はじっとベッドの上で座り込み、一呼吸おいてから「どうぞ」と答えた。パパがドアを開けると、廊下の光が差し込んで私を照らした。パパとは目線は合わせないように、そっぽを向いて黙っていた。怒られるかもしれない、と思ったのだ。今日、帰宅してからは掃除も洗濯も料理もせず、ただ部屋に引きこもっていた。本も読む気はせず、ゲームもする気はなく、寝ようにも寝られず、ただただ彩月のことに関して考え続けていた。私は何ができるのかを、ずっとずっと悩んでいたのだ。</div>
<div>「理沙、どうしたんだい。君らしくもない」</div>
<div>「&hellip;&hellip;ごめんなさい。疲れて寝てしまいました」</div>
<div>「だといいけど、目元が真っ赤だよ」</div>
<div>　すぐに泣いていたことがばれてしまった。濁流のように流れてきそうになる感情を、私はぐっとくい止める。そのままお互いに何も言わず沈黙していた。何度かパパのほうを見てしまいそうになるが、それでもずっと視線を逸らしていた。全て見透かされそうな気がして、目を合わせるのを拒んだ。やがて、沈黙に耐えきれなくなったパパが小さくため息をつくと、私に近づいてきて優しくデコピンをかましてきた。</div>
<div>「いたいです」</div>
<div>「ごめんごめん。でもね、話すのが嫌ならいいけれど、あんまり一人で悩んではいけないよ。私に言えなくても、自身で悩みを解決したくても、どこかにはけ口がないとあれやこれやと考えてしまうだけなんだよ」</div>
<div>「はい&hellip;&hellip;」</div>
<div>　確かにパパにこの話をするのは嫌だった。私が生まれてきて愛する人を亡くしたのにも関わらず、私をここまで育ててくれた。たまにママの写真を見るパパはとても寂しげで、小さな頃にそれに私はなるべく心配かけないようにしてきた。しっかりと実の子である私を愛して、面倒をみてくれたのだ。それだけに無性に甘えてみたくなることもある。わがままを言いたくなることは沢山ある。</div>
<div>「パパ。もしもの話ですが」</div>
<div>　だから、私は少しだけパパに聞くことにした。</div>
<div>「なんだい？」</div>
<div>「自分の友人がいじめられているかもしれないって気付いたとき、パパならどうする？」</div>
<div>「あー&hellip;&hellip;そのいじめてくるやつをぶん殴っちゃうかな」</div>
<div>　思わずえっ、と声をあげてしまった。パパの顔を見ると、笑いをこらえている様子で肩が小刻みに震えていた。しまった、冗談を言っていたのか。</div>
<div>「いや、ごめんごめん。ついね。でも今だったら、本当にそうするかもしれないね。母さんは絶対そうしてたから」</div>
<div>「はぁ&hellip;&hellip;。ママって、そんな凶暴だったのですか？」</div>
<div>「そうだね。元々僕自身がいじめられていたところを、ママに助けてもらったんだよ。情けないとか言って、引っ張ってくれたっけ」</div>
<div>　思い出話をするパパは何だかいつもより、一層楽しそうだった。パパとママはそこで初めて通じ合ったのだと思うと、変な出会い方をしたのだなとも思う。</div>
<div>「なんだか昔の僕を見た気がして、やっぱり親子なんだなぁって思ってしまったんだよ。ママはね。人思いが誰よりも強くて、曲がったことが大嫌いだったんだ。いじめた相手もうじうじしていた僕もぶん殴って、そりゃもう彼女は先生に怒られていたものさ。でも、知ったこっちゃないねって面と向かって先生に反抗してさ、おっかない人だなぁって思っていたんだ」</div>
<div>「それは確かにおっかないですね」</div>
<div>「だろう？　でもね、僕は彼女を憧れるようになったんだ。周りに流されずに間違ったものは間違っているってしっかり前向いて言うなんて、なかなか難しいものだからね。後、自分が間違っていた時は土下座してでも謝ってくるの」</div>
<div>「何とも真っ直ぐとした行動をするんですね&hellip;&hellip;」</div>
<div>「それでも非常に愛らしい人だったよ。少なくとも、僕にとっては」</div>
<div>　パパはまたいつものように遠い目をしていたが、切なそうにしているよりも楽しそうにしている様子だった。パパにとってそれは青春そのもので、ママと過ごした大切な思い出なのだろう。</div>
<div>「だからね、理沙。何事も恐れずに自分に思った通りに行動してもいいんだよ。君が正しいと思うのなら。後悔するぐらいならね」</div>
<div>「そうですね。はい」</div>
<div>　そう思いきって何事にもぶつかっていけるようなら悩まないんだけどなぁと思いつつも、パパの言葉に勇気付けられていた。そして、また今後どうするべきなのか考え直す。この胸の中に抱えているもやもやを晴らすにはどうしたらいいのか。私は何がしたいのかを。</div>
<div>「&hellip;&hellip;久しぶりに、どこか晩ご飯食べに行こうか」</div>
<div>「いいんですか？」</div>
<div>「たまにはね。何が食べたい？」</div>
<div>「じゃあ&hellip;&hellip;ハンバーグがいいです」</div>
<div>「ハンバーグかぁ。あの定食屋かな？」</div>
<div>「そうですそうです」</div>
<div>「懐かしいなぁ。半年ぶりじゃないかな、行くの」</div>
<div>　私はベッドから降りて、パパの顔を見た。不安な感情が拭えたわけではないけれど、いつもと変わりなくただ優しく微笑んでくれるパパを見ていると、少しばかり落ち着いた気持ちになれる。一度冷静に考え直して見よう。今、私がどうしたいのかを。あの子に対して何をしてあげたいのかを。あの時、私が助けにいけなかったことは十分に後悔したし、これ以上何もしないままでいたくなかった。</div>
<div>　私にとって、彩月は中心にあった。人からは良い子だって尊敬されていて、いつもニコニコ笑っていて話しやすくて、嫌なことを全て忘れさせてくれた。</div>
<div>　私はいつも人とはかけ離れていた場所にいて、観察しているだけの人間だった。時には感心して、時には見下して、あまり周りとは関わらずに生きてきた。</div>
<div>　きっと彩月と仲良くなれたのはたまたまだけど、波長が合っていたのだと思う。特に理由なんていらなくて、一緒にいる時は楽しくて信頼できる仲だったのだ。私が目のことを知って険悪なムードになり、しばらく関わらないこともあったけど、仲直りしてより深く相手のことを知ることができた。</div>
<div>　そして、私も彼女もコンプレックスに対して、一人で悩んできた。私の人と関わるのが苦手なのを和らげてくれたのは彩月のお陰なのだ。私が思っていた以上に、人と関わることに怖がる必要は無かったのかもしれない。</div>
<div>　だから、今度は私が彩月を支えてあげたいんだ。</div>
<div>「ねぇ、桃香。聞きたいことがあるんだ」</div>
<div>　昼休み。桃香が一人で廊下を歩いているところを見つけ、私から話しかけていた。</div>
<div>「何？　あなたから話しかけてくるなんて、珍しいわね」</div>
<div>「理沙の目のことについてなんだけどね」</div>
<div>　そういうと、桃香の表情が一瞬で真顔になって、ふむ&hellip;&hellip;と呟いた。右手を腰に当てて、少し高圧的な姿勢で私の目をまっすぐ見つめてくる。</div>
<div>「メールが出回っていた&hellip;&hellip;って言ってたよね？」</div>
<div>「そうね。多分、クラスの子達は大体知っているかもね」</div>
<div>「その回ってきたメールの相手を教えてくれない？」</div>
<div>「&hellip;&hellip;それを聞いて、何をするつもり？」</div>
<div>「探すんだ。その情報をいたずらに流した人と、彼女に目のことを聞いてきた奴を」</div>
<div>　なるほどね、と桃香が呟くと今度は腕を組んで眉をひそめた。何をするかなんて言う必要は無いと思ったけれども、彼女には本音で話さないと教えてもらえない気がした。いつも理由を知りたがって私に話しかけてきたし、ボロを漏らさないか伺うように聞いてくるから、きっと適当な嘘で桃香の機嫌を損ねたら、話をはぐらかされて終わってしまうような気がした。</div>
<div>「もし、私が教えないと言ったら？」</div>
<div>「手当たり次第、他の人に聞いて回るよ。無理にあなたから聞き出すつもりはないんだ」</div>
<div>「なるほど。それじゃあ、もう一つ質問。仮にそのあなたが言う犯人二名が見つかったとして、あなたはどうするの？」</div>
<div>　私は答えるのを少しだけ躊躇った。桃香は私の目を見て、私の思っていること全てを見据えているのではないかと危惧したから。ただ、すぐにその考えを放棄した。もう、本音を隠す必要は無い。私はこの心にあるもやもやとしたものを晴らして、彩月に何も心配することはないと伝えるんだ。</div>
<div>「もし、悪意があって彩月に接したのなら、一発ぶん殴ってくる」</div>
<div>　それを聞いた桃香は、突然表情を歪ませて、次には腹を抱えて笑っていた。廊下で歩いていた人は何があったのかとこっちを振り向いてくる。やめてくれ。私は真面目に桃香と会話していただけで、何もおかしなことはないんだ。こっちを向かないでくれ。</div>
<div>「私は、真面目に話しただけなんだけど&hellip;&hellip;」</div>
<div>「いや～。ごめんごめん。あまりにその、暴力的な答えがあなたの口から出てきたから、ね。理沙ちゃんには全然似合わなくて、びっくりしちゃったのよ」</div>
<div>「似合う似合わないの問題？」</div>
<div>「後はまぁ、もう一つあるんだけどさ。ごめんね。私、あなたに一つ嘘をついていたの」</div>
<div>　嘘をつかれていた？　いつ？</div>
<div>「私、誰が最初にメールを流したのか知らないって言ったと思うけど、本当は知っているのよ。それに、彩月ちゃんに直接目のことに聞いた人も、その子なの。色々あってね」</div>
<div>「そうだったんだ&hellip;&hellip;」</div>
<div>「けどまぁ、その子と直接話をした方がいいと思うし、会えないか聞いてみるわね。でもその&hellip;&hellip;すぐに殴りに行くとかやめてあげてね。昔から仲良くしている子なの」</div>
<div>「はい、分かりました」</div>
<div>　桃香はそう言うと、学校に携帯持ち込み禁止にも関わらず、堂々と取り出してメールを打ち出した。その子に連絡してくれているんだろう。もっと言い合いになるのではないかと思っていただけに、何だか肩の力が抜けてしまった。</div>
<div>「あの。桃香」</div>
<div>「何？」</div>
<div>「いままで無愛想な態度とってしまって、ごめんなさい」</div>
<div>　そういうと、桃香は携帯から目線を逸らして私に向かっていたずらっぽく笑った。</div>
<div>「理沙ちゃん。素直になると可愛いとこあるのね」</div>
<div>　急にそんなことを言われてしまい恥ずかしくなった私は、顔を伏せてやめてくださいとだけ否定した。桃香は頭をゆらゆらさせて、機嫌良さそうに鼻歌交じりでメールを打ち続けていた。</div>
<div></div>
<div style="text-align: right;">続く</div>
<div style="text-align: right;"><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/44/" title="">前の話＜その11＞</a></div>
<br />

<div style="text-align: right;"><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/46/" title="">次の話＜その13＞</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>長編小説</dc:subject>
    <dc:date>2015-09-28T02:34:00+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
  </item>
  <item rdf:about="https://whiteapple.side-story.net/%E9%95%B7%E7%B7%A8%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%90%E9%95%B7%E7%B7%A8%E3%80%91%E7%9E%B3%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%8D%AE%E3%81%88%E3%81%A6%20%E3%81%9D%E3%81%AE11">
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    <title>【長編】瞳を見据えて その11</title>
    <description>　そんな調子で今日一日中、最悪な気分で過ごしていた。先生に質問されても、上の空で何を聞かれたのか分からない。体育のバレーの授業では、思い切り顔面にボールが当たってしまい、しばらく保健室で休む羽目になった。珍しくあの熱血漢溢れる体育の先生が焦っていたのを見て何やってんだ私は、と自分に呆れていた。私は色...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>　そんな調子で今日一日中、最悪な気分で過ごしていた。先生に質問されても、上の空で何を聞かれたのか分からない。体育のバレーの授業では、思い切り顔面にボールが当たってしまい、しばらく保健室で休む羽目になった。珍しくあの熱血漢溢れる体育の先生が焦っていたのを見て何やってんだ私は、と自分に呆れていた。私は色んな感情が頭の中で交差するのを抑えつけながら、毛布にくるまって深い眠りに落ちていく。</div>
<div>　そして、夢の中で彩月に会った。目が悪いはずなのに、どこまでも続く緑の丘で寝転がって空を眺めていた。</div>
<div>「彩月。こんなところにいたの」</div>
<div>　私が話しかけると、彩月は無邪気に笑って見せた。何でもないけども、感情が高ぶったから笑ってみたという、そんな赤ん坊のような笑顔だった。</div>
<div>「見て見て、理沙ちゃん。こんなに綺麗な青い空だよ」</div>
<div>「そうだね。目は大丈夫なの？」</div>
<div>「今日は調子がいいみたい。なんてね」</div>
<div>　遠くまで広がる空とまばらに飛んでいく白い雲を見て、彩月は嬉しそうにしていた。きっと彼女にとって自由に空を見られることはとても素晴らしいことなのだろう。私は彼女の隣に寝転んで、同じ風に空を見た。別に何の感動もなかったけれども、彩月がそこにいることはとても素敵なことだった。</div>
<div>「私ね。ずっと探しているの」</div>
<div>「何を？」</div>
<div>「教えてあーげないっ」</div>
<div>「はは、何よそれ」</div>
<div>　よく分からない会話をして、おかしくてお互いに顔をほころばせて、そして目が覚めたら日が暮れていた。気付くとそこに青空はなく、保健室の白い天井。静かな保健室の中で今でも彼女の声が耳にこびりついていて、こだまして聞こえてくるような感じがあった。瞼を閉じて、そのこだまが聞こえなくなるまで、ベッドの上に横たわる。そうすることで不思議と落ち着きを取り戻していった。</div>
<div>　保健室の先生にお礼をいい教室へ戻ると、既に夕会をしている最中だった。クラスメイトの視線がこちらに向けられ、恥ずかしい思いをしつつ「お騒がせしました&hellip;&hellip;」と私は一言言って、こそこそと自席へと戻る。朝と同じように桃香が心配そうに顔を伺ってきたが、今度はにこりと愛想笑いをして誤魔化した。</div>
<div>　夕会が終わると、私はそそくさと教室を出て家に帰ることにした。特に今日は誰にも話しかけられたくないので、できる限り人を避けて校門まで歩く。五限目の体育からずっと寝ていたからか、夢の内容も合わさって何だか身体がふわふわとしていたように思える。</div>
<div>　思い返すと彩月がいなくなってから、二週間ほど過ぎていた。時が経つほど、周りの様子はまるで彩月が最初からいなかったのではないかと思うくらいすんなりと学生生活を満喫している。もちろん、桃香のようにたまに話題にあげる人はいるのだが、毎日のように考えていたのは私だけだったのかもしれない。私はこのクラスの中心は彼女だと思っていて、その中心がいなくなった瞬間、今の環境は全て変化してしまうのだろうと考えていた。平穏でいられたのも、明るくいられたのも、変わりなくいられたのも、全ては彼女が作り出したクラスの雰囲気なんだと考えることもあった。でもそれは私の誇大妄想に過ぎなくて、皆は普段通りで特に変わった様子もなく自然体だった。それに腹立たしく思うこともあったけど、彩月からメールの返事も帰ってこず面会しに行くこともできない今、彼女の帰りをただ待つことしかできないのである。きっと私ではこれ以上、何もしてあげることはできない。ただ時間が解決してくれることを願うばかりだ。</div>
<div>　校門前までたどり着くと、見覚えのある人が校内をキョロキョロとのぞき込んでいた。よく見るといつも彩月を送迎していた運転手である。付き添いの人だって彩月は言っていたが、もしかして彼女は既に退院していて近くにいるのだろうか。そんな期待と不安を膨らませていると、運転手と目があって突然声をかけられた。</div>
<div>「あ、こんにちは。笹木さん」</div>
<div>「どうも。&hellip;&hellip;確か、天野さんを送迎している方ですよね」</div>
<div>「えぇ、そうですよ。矢口といいます」</div>
<div>　初めて会話を交わしたけれども、理沙と関わってからは幾度となく矢口さんへお辞儀をしていたから、少し変な感じがした。初めてなのに初めてじゃない感じ。矢口さんはにっこりと笑うと、私の両手を握りしめてしっかりと私の両目を見つめて来た。</div>
<div>「あなたにどうしても話したいことがありまして。この後、一緒にお話できませんか？」</div>
<div>「は、はい。&hellip;&hellip;もしかして、天野さんのことでしょうか」</div>
<div>　私は周りに聞こえないよう、小声で彼女の名前を出すと矢口さんはにっこりと笑って返事をする。</div>
<div>「その通りですよ。少しばかり心苦しくなると思うのだけど」</div>
<div>「大丈夫です。私もその話聞きたいです」</div>
<div>　私は迷うことなく答えた。もしかしたらこの人の話によって、この心の中でもやもやとし続けているものが、全て晴れるかもしれないと思ったからだ。先ほどまで落ち込んでいた心が嘘のように無くなっていた。それほどまでに彩月に何があったのか、真実を知りたかった。</div>
<div>　矢口さんは校門で話しにくいからと、近くのカフェまで一緒に歩いて行った。互いに飲み物が届くと、そうねぇと言って矢口さんから話を切り出す。</div>
<div>「あなたのこと、いつも嬢さまから聞いていましてね。少し変な感じな人だって」</div>
<div>「変な感じ、ですか」</div>
<div>　あの子、私のことをそんな風に思っていたのか。</div>
<div>「えぇ。誰の色にも混じらないけど、でもそこにしっかりと溶け込んでいる。クラスの中心にいて、皆を見守っているような人と言っていましたよ。人に媚びたりしないところが、ポイント高かったみたい」</div>
<div>「いやいや、ただ私はそういうのが苦手なだけなのですよ」</div>
<div>「なるほどねぇ。でも学校での出来事を話すことは大体あなたのことばかりでしてね。もちろん他の子とも仲良くしていたみたいですが、その中でもあなたには心を開いていたみたい」</div>
<div>　矢口さんは話をそこで区切ると、カップに口を当ててゆっくりと珈琲を味わって飲み始めた。一つ一つの動作が上品で、魅力のある大人な女性だと見とれていた。</div>
<div>「それでね、ここから本題なのですが」</div>
<div>　矢口さんはカップをコースターの上に戻して、先ほどまでの緩やかな会話を断ち切るように言った。</div>
<div>「あなたが嬢さまの目に関する噂を流したのですか？」</div>
<div>「は？」</div>
<div>　思わずそんな声が出てしまった。そして瞬時に理解した。私は疑われているのだ。</div>
<div>「嬢さま、そのことでショック受けてしまいましてね。私のこの目がクラスの皆にばれているかもしれないって、とても落ち込んでしまったようです」</div>
<div>「い、いや、違います。あの目に関しては、私は誰にも話していません&hellip;&hellip;。身の潔白を証明しろと言われたら、証拠も無いので無理ですが、私は決してそんなことはしていません」</div>
<div>「なるほどねぇ」</div>
<div>　ゆっくりと首元を締め付けられているような感覚が襲ってきた。落ち着けと、私は何もしていないのだからと心を落ち着かせて、こちらから話を続けた。</div>
<div>「やっぱり、天野さんに何かあったのですか」</div>
<div>「そりゃもう、大変でした。事件が起きる前日、凄く怯えた様子で車に乗ってきましてね。こちらから大丈夫って呼びかけても嬢さまは大丈夫としか答えない。そんな風には見えなかったのですけれどもね」</div>
<div>　淡々と流れるように語る矢口さんは、目を細めて考え深そうにしていた。真実を暴いてやろうと思う、ドラマでよく見る刑事のような鋭い眼光でこちらを伺っている。でも、私は本当に何も知らなかったから矢口さんに対して緊張しつつも、どうにか彼女の情報を引き出そうと心の中で強く思っていた。</div>
<div>「あの日、天野さんは放課後になった瞬間、教室を飛び出ていきました。様子がおかしかったのは、皆気付いていたかと思います」</div>
<div>「えぇ。その通りです。だって彼女、自分で目を焼いたんですもの」</div>
<div>「焼いた&hellip;&hellip;？」</div>
<div>「次の日迎えに行ったのですが、そこには目から血を流す嬢さまがいたのですよ。ビックリして、すぐ救急車を呼んでね、危うく失明するところでした」</div>
<div>「それは、事故とかですか？　朝、日が差し込んだとか」</div>
<div>「ちょっとくらい日差しに当たったところで血を流すまでは至らないですね。後から聞いたのだけど、自分でやったと言っていたわ。まるで太陽の方へ向くひまわりのように、真っ赤に目が焼けてしまうまで、ずっと見ていたらしいの。本当にもう少しで失明してしまうところでしたよ」</div>
<div>　矢口さんがあまりにすんなりと話してくるから、全く実感は沸かなかったけれども、それは想像するだけでぞっとするような恐ろしさを感じた。自分の噂を聞いて、そのショックで自分の目を焼き切ろうとした。</div>
<div>　何故そんな行動をしたのだろう？　今まで交わした彩月との会話を思い出していた。じっと思い返していた。何故。何故なのか。思いを巡らせて、彼女の話を丁寧に読みとっていた。その間も矢口さんはこちらを細い目で除いていたが、そんなに気にならなかった。彩月がそこで何を伝えたかったのか、すぐそこまで私は知っていた気がしたのだから。</div>
<div>　そして、いつの間にか私は乾いた笑いがこぼしていた。</div>
<div>「ここまで言えば、あなたなら分かりますよね」</div>
<div>「はい」</div>
<div>「本当に、嬢さまはお馬鹿さんだと思いませんか？」</div>
<div>「えぇ。馬鹿です。大馬鹿です」</div>
<div>　それは私にも言えたことだった。あの日、異常に気付いて後を追いかけていれば、止めてあげられたかもしれない。そんなくだらないことを考えないでと言えたのかもしれない。それは結果論にしか過ぎない話だけど、私は後悔していた。</div>
<div>「&hellip;&hellip;やはり、あなたは違いますね。悪意なんてこれっぽっちも感じられない」</div>
<div>　矢先ほどの圧迫感のある表情は消え、矢口さんは優しい微笑みでそう呟いた。</div>
<div>「あの嬢さまの一番の友達ですもの。悪い子のはずがないですね」</div>
<div>「そんなこと、ないですよ」</div>
<div>「いえいえ。嬢さまだってきっと気付かれているはずです。きっと、笹木さんはそんなことをする人ではないってことくらい」</div>
<div>「&hellip;&hellip;一つ、質問してもいいですか？」</div>
<div>「えぇ。どうぞ」</div>
<div>「もし、私が意図的に噂を広げて、天野さんを責めた本人だったら、矢口さんはどうするつもりだったのですか」</div>
<div>「あなたの親に電話して「うちの子に何してくれてるのよ！」って、クレームする予定でしたよ」</div>
<div>　私は思わず身震いを起こしまった。それをみた矢口さんはクスクスと含み笑いをして、「冗談ですよ冗談」と付け足す。</div>
<div>「驚かしてしまって、ごめんなさい。でも、なんだかそれって凄く親らしい行動みたいでいいかな、なんて少し考えてしまいましてね。でも、直接誰かに何かされた様子もないし、嬢さまも被害妄想を膨らませ過ぎただけだって、気付きつつあるみたい。私はこの家族に雇われてから三ヶ月ほどしか経ってないですが、やはり昔に辛いことがあって、それを思い出してしまったのでしょう。だからね、私はいずれあなたになら心を開いてくれる時が来ると思って話しかけたのです。勝手なお願いをしていると思うけれども、あの子の支えになって欲しいのですよ。私だけでは、どうしても話してくれないこともありましてね」</div>
<div>「そう、ですね」</div>
<div>「&hellip;&hellip;ごめんなさいね。別に重く受け止めなくてよくて、彼女と普段通りに接して欲しいだけなの。何だか放っておけないのですよ、嬢さま」</div>
<div>「それは何となく分かります。きっと、天野さんの愛されているところなんだと思います。人に気を使いすぎるところ」</div>
<div>「――確かにその通りですね」</div>
<div>　その後は、矢口さんとお互いのことを知るように適当な会話を交わしていた。学校の様子だとか、自分の趣味だとか、好きな本や作家は何かとか。重要なことは全て話終わって私に興味を抱いたのか、先ほどの彩月のこととは関係のない話をしていた。年の離れた友達ができたような感覚があって自然と話していたと思うけれど、心の片隅にはずっと彩月のことがつきまとっていた。</div>
<div>　矢口さんは別れる前に「嬢さまのことよろしくね」と改めて私に伝え、そのまま去っていった。矢口さんの背中が見えなくなると急に目眩がして倒れそうになり、近くの電柱に寄りかかった。矢口さんと会話する際に気を張りすぎてしまっていたのと、彩月の支えになって欲しいという問いに自信がなくなってしまっていたのが、疲労の要因だと思う。</div>
<div>「どうしよう&hellip;&hellip;」</div>
<div>　私はカフェの前で一人、誰にも聞こえない声で弱音を吐いていた。</div>
<div style="text-align: right;">続く<br />
<br style="text-align: right;" /><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/43/" title="" target="_self" style="text-align: right;">前の話＜その10＞</a><br style="text-align: right;" /><br style="text-align: right;" /><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/45/" title="">次の話＜その12＞</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>長編小説</dc:subject>
    <dc:date>2015-07-02T02:22:41+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
  </item>
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    <title>【長編】瞳を見据えて その10</title>
    <description>「後、彩月のことなんだが、持病が悪化したらしく一ヶ月は入院するとのことだ」
　朝会時に突然先生から彩月のことを報告された。教室内がどよめきに包まれると、「はい。皆さん静かに」と先生は手を叩きながらクラスの子達を大人しくさせた。
　私は何事も無かったかのように冷静を装っていたが、内心は物凄く動揺してい...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>「後、彩月のことなんだが、持病が悪化したらしく一ヶ月は入院するとのことだ」</div>
<div>　朝会時に突然先生から彩月のことを報告された。教室内がどよめきに包まれると、「はい。皆さん静かに」と先生は手を叩きながらクラスの子達を大人しくさせた。</div>
<div>　私は何事も無かったかのように冷静を装っていたが、内心は物凄く動揺していた。唐突クラスの中心にいた彼女は教室からいなくなって、支えになっていた重力を失ってしまったような奇妙な感覚に陥る。</div>
<div>　こっそり私は携帯を取り出して、机の下に潜らせる。「急にどうしたの。大丈夫？」と短くメールを打って送信したが、放課後になっても彩月から返事はこなかった。もうすぐ夏休みが始まって一緒に遊ぶ約束もしていたのに、何が何やら訳が分からない。</div>
<div>　こうして、またいつも通り退屈な日常が訪れた。学校に行って、家に帰って、何となくゲームの続きをして、パパと食事をしながら互いの話をして、明日を迎える。パパにも彩月の件は話さなかった。話してしまうと途中で意味の分からない状況を再認識してしまって、泣いてしまいそうだったから。私が悪いことをしてしまったのではないかと、自問自答に悩まされる日々が続いた。</div>
<div>　いよいよ本格的に暑い季節へとなってきたので、長かった髪を切りにいった。美容師とぎこちない会話をしつつ、短くなった私は別人のように思えた。無意識ではあったが、少しずつ何か変えたいと思っていたのだ。でも実際には何も変わらず、私はただただずっといつも通りの日常を過ごすだけだった。</div>
<div>「へぇ。思いきりやったね。あなた」</div>
<div>　教室に入ると、ショートヘアになった私を見た桃香がそう話しかけてきた。</div>
<div>「うん。気分転換したくて」</div>
<div>「気分転換&hellip;&hellip;ねぇ&hellip;&hellip;」</div>
<div>　意味ありげに彼女は呟いてきたが、私は何も言い返さず椅子に座り机から本を取り出す。</div>
<div>「あなた、大丈夫？」</div>
<div>　いや話しかけてくんなよ、と思う私の意志とは裏腹に関わらず、桃香は声をかけてくる。この子の少しネチネチとした話し方が、個人的だが私は気に食わない。</div>
<div>「大丈夫って、何が？」</div>
<div>「彩月ちゃんのことよ。あなた落ち込んでるんじゃないかと思ってて」</div>
<div>　図星だった。けど、見抜かれたと思われたくなくて、私はまだ強がってみせる。</div>
<div>「そんなことないよ。&hellip;&hellip;それはしばらく会えないのは寂しいけど、仕方のないことだから」</div>
<div>「仕方のないこと、か。確かにね。それにしても唐突すぎると思うけど、あの眼の病気が悪化するなんて」</div>
<div>「そうですね」</div>
<div>「私ね。何かあったんじゃないかと思ってるの。ほら、彩月ちゃんが来なくなる前、何か様子が変だったでしょ？　先生の話が終わるなり、俯くように走って帰ったじゃない。やっぱりおかしいと思わない？」</div>
<div>「確かに&hellip;&hellip;あの日から眼が悪くなっていたんじゃないかな」</div>
<div>　お喋り好きな桃香に話をさせながら、私はゆっくりと本を読みだした。やめてくれ、もう私の前でその子の話をしないでくれ。今にでも心から喚き叫んでしまいそうだ。そんな風に思っていたが、次に彼女から発せられてた言葉によって益々訳の分からない感情に悩まされることとなる。</div>
<div>「あの子さ。眼が赤くなるくらい病気が悪化しているのに、やっぱり無理していたんじゃないのかなと思うの。それでも学校に来たくて仕方が無かったのは分かるのだけどね&hellip;&hellip;それでも私たちに頼りたくなかったのかしら」</div>
<div>　ドクンと心臓が飛び跳ねていた。本を閉じて、桃香の顔を見た。でも、急に私が反応したことに彼女自身も驚いたのか、ぽかんとした顔で私を見返した。</div>
<div>「ど、どうしたの。大丈夫？」</div>
<div>「何で、そのことを」</div>
<div>「何でって、何を？」</div>
<div>　私は周囲を一度見渡して、誰にも聞かれないように桃香に顔を近づけた。</div>
<div>「赤い眼のこと、誰に聞いたんですか」</div>
<div>「誰って&hellip;&hellip;知らないけど、あの眼を見れば隠してることぐらいは分かるでしょう？　異様に黒いし。あんまり眼を合わせてくれないから、知られたくなかったのは分かるのだけどね。それにメールで写真回ってこなかった？」</div>
<div>「メール&hellip;&hellip;？」</div>
<div>「あぁ、そっか。あなたはあまりクラスの子と関わらないものね。ほら、えっと&hellip;&hellip;。あった。これよ」</div>
<div>　校内は携帯の使用禁止だというのに、桃香は堂々と私に画面を見せてきた。そこには、中学時代の赤い眼をしている彩月がいた。今とは違って彩月は赤い眼を隠すことなく、ありのままの姿で卒業アルバムに写っていた。</div>
<div>「&hellip;&hellip;これ、いつ誰が回してきたの？」</div>
<div>「そうね。五月辺りだったかしら。でも噂を流した最初の人が誰かなんて、私は知らないわよ。もちろん、彼女の前でも気に止めるくらいで何も言わなかった。だって、わざわざカラコンで隠してるのよ？　何か深い事情があるに決まってるじゃない」</div>
<div>「そう、ですね。&hellip;&hellip;そうですね、確かに」</div>
<div>「もしかして、あなた。実際に見てしまったの？」</div>
<div>「&hellip;&hellip;ごめんなさい。これ以上、ちょっと。話、ありがとうございます」</div>
<div>「えぇ。そう、えっとね。あんまり、自分を追い込まないでね。何だか、私から見たあなたはそんな風に見えるの」</div>
<div>「&hellip;&hellip;すみません。本当に、ありがとうございます」</div>
<div>　朝会が始まる前に、一度だけ席を外して急ぎ足でトイレへ向かった。嗚咽が段々漏れてくる、意味の分からない状況に追い込まれて、涙がこぼれてくる。トイレの個室に入って、一度気持ちを落ち着かせる。止まらない涙を一度全部、洗い流す。深呼吸を何度も繰り返す、何事もなかったように教室へ戻れるように、必死に押さえた。</div>
<div>「どうなっているんだ&hellip;&hellip;」</div>
<div>　自然とこぼれてきた言葉は、自身が非常に混乱していることを表すものだった。元々、彩月の眼のことは皆知っていて、それを黙って見過ごしていたんだ。でも、彩月はそのことに一切気づいていなかった。知られたくなかったことは、五月にあのメールを見た人は既に分かっていたんだ。そう考えると、やっぱり彩月が突然走って帰ってきたあの日に何かあったに違いないと思いが巡る。一体何があったの、彩月。黙ってないで、ちゃんとメール返してきてよ。事情を話してよ、彩月。そう思えば思うほど、涙は止まらなかった。</div>
<div>　結局、私は朝会どころか一限目の授業に遅れた。でも体調が優れないと嘘の証言をするとすんなり先生は信用し、私のことを心配してくれた。クラスの人たちは妙な顔で私を見ていたが、前の席の桃香だけは私のことを本当に心配そうに見つめていたと思う。そんな桃香を見て、私は本当に酷い奴だと改めて自分を嫌悪した。</div>
<div style="text-align: right;">続く<br />
<br style="text-align: right;" /><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/42/" title="" target="_self" style="text-align: right;">前の話＜その9＞</a><br style="text-align: right;" /><br style="text-align: right;" /><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/44/" title="" target="_self">次の話＜その11＞</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>長編小説</dc:subject>
    <dc:date>2015-06-08T00:15:49+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
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  <item rdf:about="https://whiteapple.side-story.net/%E9%95%B7%E7%B7%A8%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%90%E9%95%B7%E7%B7%A8%E3%80%91%E7%9E%B3%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%8D%AE%E3%81%88%E3%81%A6%20%E3%81%9D%E3%81%AE9">
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    <title>【長編】瞳を見据えて その9</title>
    <description>　そして土曜日。雲一つ無い青空が私の頭上に広がっている。今年は梅雨明けが早く、夏はすぐ傍までやってきているのを感じていた。日差しは強く、彩月の目に支障がでて出かけることができないのではないかと心配していたが、待ち合わせのバス停に彼女の送迎車がやってきたところで、私はほっと一息ついたのだった。運転手は...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<div>　そして土曜日。雲一つ無い青空が私の頭上に広がっている。今年は梅雨明けが早く、夏はすぐ傍までやってきているのを感じていた。日差しは強く、彩月の目に支障がでて出かけることができないのではないかと心配していたが、待ち合わせのバス停に彼女の送迎車がやってきたところで、私はほっと一息ついたのだった。運転手はいつも通り手際よく後部席のドアを開け、彼女に日傘をさしだす。</div>
<div>「ありがとう」</div>
<div>「いえいえ、それではお気をつけて」</div>
<div>　彩月へ日傘を渡すと、運転手は私に丁寧なお辞儀をされたので、私もそれに習ってお辞儀を返した。運転手はにっこりと笑うと、そのまま車に乗ってどこかへ去っていった。彩月はいつものように送迎車が見えなくなるまでにぶんぶんと大きく手を振ると、私の傍まで小走りで駆け寄ってきた。</div>
<div>「御免。待った？」</div>
<div>「んーん。さっき到着したところだよ」</div>
<div>「そっか。それじゃあ、行こっか」</div>
<div>　そういって彼女はニコニコしながら私の前を歩き始めた。彩月は無地のTシャツに白いスカートと、派手すぎない服装だった。それでも、スタイルがよいせいなのかそれとも顔立ちがよいせいなのか、随分と私とは差がある気がする。私は少し自分の体型にコンプレックスを感じながら、彩月の横に並ぶように歩き出した。途中、日傘の中に入らないかと私に気を使ってきたが、うっかり何かあって目を痛めてしまっては困るので、流石に断っておいた。</div>
<div>　私たちはショッピングモールへ辿り付くと、服やら雑貨類を特に計画もなく適当に見て回った。普段は一人で見て回るため見慣れたはずの店も多くあったのだが、いつもとは違う新鮮な気分に満ちていた。それからは二人で人の流れに流されるまま、店を巡り回っていた。何時も見て回る服屋を紹介したり、彼女から似合う服装をセレクトしてもらったり、学校で使う文具を見に行ったり、高いネックレスやイヤリングを見て回りひやかし客になったりと、気になるものが視界に写るとそれに吸い寄せられて、二人で語り合う。</div>
<div>　そうして、あっと言う間に時間は過ぎていった。二時間ほど経ったところで互いに一通り買い物を済ましたのを境に、休憩しようと私は彩月に提案する。彩月も同じことを思っていたので、よく私が勉強の時にお世話になっていた珈琲店へ向かった。</div>
<div>「ここの店、初めてきた」</div>
<div>　物珍しそうにまじまじとメニューを眺めながら、彩月は呟いた。</div>
<div>「この珈琲なに？　黒糖入ってるの？」</div>
<div>「そうだよ。&hellip;&hellip;もしかして、あんまり珈琲飲まない？」</div>
<div>「たまにしか飲まないかなあ」</div>
<div>「そうなんだ。苦手だったら、他の店にするよ？」</div>
<div>「いや、ここで大丈夫。苦すぎなければ飲めるから。何かおすすめってある？」</div>
<div>　そうだなあ、と私は呟いて急いでメニューを左から右へと見回す。店員がニコニコとオーダーを待っているのが怖い。お待たせして申し訳ないと心の中で謝る。</div>
<div>「じゃあ、これとかがいいんじゃないかな。キャラメルが入っているし、飲みやすいと思う」</div>
<div>　私が指で指定のメニューを示すと、顔を近寄らせて商品の画像をじっと眺めだす。</div>
<div>「ほうほう。珈琲にキャラメルを入れるんだ」</div>
<div>「そうそう」</div>
<div>「じゃあ店員さん、これのケーキセットでお願いします」</div>
<div>　かしこまりましたと店員が素早くレジをすませ、珈琲を注ぎ始めた。その間、私は店内を見回る彩月をずっと眺め、まるで子供みたいと少し笑っていた。</div>
<div>「そりゃそうだよ。私、あんまり外に出ないんだもん」</div>
<div>　注文の品が届き、席に座ったところでそのことを伝えると、セットでついてきたチーズケーキを貪りながら、彩月は強い口調でそう言った。子供っぽいと本人に言ったら少し気に障ったみたいだ。</div>
<div>「この珈琲、あまっ」</div>
<div>「やっぱりそれあまいよねえ」</div>
<div>　甘い珈琲にケーキは合わなそうだ。でも、彩月は甘いのが好きなのか、気にせず食べ進めていた。</div>
<div>「理沙ちゃんはいつもここに来てるの？」</div>
<div>「たまに、ね。本を買いに来た帰りに飲みたくなることがあるんだよね」</div>
<div>「ふーん。本よく読んでるよね。家でもずっと本読んでるの？」</div>
<div>「大体は本を読んでいるけど、たまに&hellip;&hellip;えーっと、そう。父さんから借りてゲームやることもある」</div>
<div>「お父さんから借りるの？」</div>
<div>「職業柄なのか、父さん好きなんだよね。ゲーム。ファンタジー作品が好きだから、よくお勧めしてもらっているの」</div>
<div>「ファンタジーか&hellip;&hellip;普段の理沙ちゃん見てると、あんまりそうは思わなかった。どちらかというとミステリーとか、そんなイメージ」</div>
<div>「そうかな」</div>
<div>「うん。そしてね、話が進むよりも先に犯人を推理して読み進めてそうな、そういう感じ」</div>
<div>　それはそれで面白そうだけど、頭が疲れそうな読み方だな。</div>
<div>「あ、でも、確かに言われてみるとファンタジー好きそうだね。どことなく、現実離れしている感じが」</div>
<div>「現実離れ？」</div>
<div>「たまに理沙ちゃん、ぼーっとしてることがあるんだもん。私に勉強を教える時とか、すっごい頼りになるんだけど、一人になった瞬間に別のことを考えているというか、違う世界を見ているみたいな。&hellip;&hellip;この前、上履きに履き替えずに階段を上がっていくところを見た時にはびっくりしたよ」</div>
<div>「&hellip;&hellip;あれ、見られてたのか」</div>
<div>「思っていたより、気が抜けたところがあるんだなぁって、少し安心しちゃった」</div>
<div>「そこ、安心するところ？」</div>
<div>「そりゃもう」</div>
<div>　ふふふ、と含み笑いしながら頬杖をしながら話す彼女に振り回されつつ、内心は穏やかな気分だった。互いの会話に遠慮とかなく、対等な立場で私との会話を保ってくれていた。愚痴とか嫌味とかそんなものはなくて、ゆったりと好きなことを話せていたような気がする。少なくとも私はそう思っていた。</div>
<div>　ただ、一点。流石にあの眼のことについては、私の口から話すのは遠慮していた。やはり場の空気を壊したくないこともあり、機嫌を損ねるようなことをするのは嫌だったのだ。</div>
<div>「理沙ちゃんってさ」</div>
<div>「うん」</div>
<div>「私の眼のこと、一度も詳しく聞こうとしないんだね」</div>
<div>　だから、彼女の口からその話が出てきた時は思わず動揺してしまい顔が石みたいに固まっていた。珈琲カップに手を添えたまま、視線を逸らすようにカップの中で波打つ珈琲を眺める。</div>
<div>「やっぱり気を使ってくれているんだ」</div>
<div>「そりゃね。あんまり聞かれたくないことなんでしょ？」</div>
<div>「その通り」</div>
<div>　彩月は赤い眼がばれた日のように怯えることはなく、薄く微笑んでみせた。</div>
<div>「私さ。中学の頃はずっと治療に専念していたんだ。失明しそうになって、視力回復してからもしばらくは安静にしていたの。たびたび悪くなるものだから、あまり学校にいかなくなっちゃってね。遊ぶ友達なんていなかったの。だから、高校になってからは思い切り人と触れ合いたいと思ったんだ。もちろんこっちから接するのは凄く怖かったんだけど、それ以上に同級生の子達がどんな考えを持っているのか興味があったの」</div>
<div>　彩月は両手の指同士をいじりながら、ゆっくりと自分のことを話し出した。急にどうしてそんな話をするのだろうと思ったけれども、それだけ私のことを信用してくれていたのだと後になって分かった。一人でもいいから自分の心を打ち明けられるような理解者が欲しくて、彼女は吹っ切れて全部話してくれたのだ。でも、その時の私は自分のことを心から信頼してくれる人間なんているはずがないと密かに思っていたものだから、何か彼女は企んでいるのではないかと不安になっていた。</div>
<div>「前は峰上中だったんだよ、私」</div>
<div>「あれ。そんな学校、近くにあったっけ？」</div>
<div>「栃木県だから、ここから車で三時間もかかるとこ」</div>
<div>「嘘。そんな遠くから？」</div>
<div>「うん。私が両親にわがまま言ってね。今はいつも送り迎えしてくれる人がいるでしょ？　あの付き添いの人と二人暮らししてるの」</div>
<div>「そうだったんだ。でも、何でこの学校に来ようと思ったの？」</div>
<div>　その時、私は彼女と初めて眼を合わせて会話した。綺麗な濃い黒を両目に宿していて、私の心を見据えているように感じた。彩月はいつものように明るさがあって、絶やさず静かに微笑んでいたけど、瞳は寂しそうに思えた。まるでその眼だけは別の生き物のように思っていた。じっと眺めていたら、いつか滴を落としてしまいそうな、そんな切ない眼だった。少しだけ間が空いた沈黙が続いて、彼女は甘い珈琲をゆっくりと味わって飲んだ。そして、彩月は落ち着いて息を吐き出して、カップをテーブルに置いていく。</div>
<div>「やり直したかったんだよ。全部。知らないところにくれば何かが変わるかもしれないって期待して、頑張りたかった。向こう側に全てあの時の私を置いてきて&hellip;&hellip;えっと、何だろう。そう、普通に女子高生したかった」</div>
<div>「普通に女子高生、か」</div>
<div>「うん。でも、やっぱりもう一歩踏み出せていなかったんだ。だからあの時、理沙ちゃんには秘密がばれてよかったんだと思う」</div>
<div>「そっか。本当に私なんかで大丈夫だった？」</div>
<div>「うん。理沙ちゃんで良かったよ。とても優しい人が相手で良かった」</div>
<div>　そうでもないよと言いそうになるのを堪えて、呪文を唱えるようにそっかそっかと空返事をしていた。語らないだけでそんなに優しい人間ではないから、なんだか騙しているような気分に陥り、少し胸が苦しくなる。ただ、やはり私は彩月のことを尊敬に値する人物だったのだと改めて自覚した。真っ直ぐ自分の理想を目指して頑張るこの子は素敵だと、私はじんわりと心へ染み込むように感動した。</div>
<div>　ただ彼女は私に対しても一歩届いてなかったのかもしれない。どうして私は踏み出さずに距離を置いて頷くだけに徹したのか。この後、酷く後悔し自分を責めることになった。私は信じていなかったのだ。だから、必死になって手を差し伸べたいと思う自分を馬鹿にしたし、彼女を好きになろうとする自分を愚弄した。でも結局、彼女のことを思おうとした私（その子）のほうが、きっと正しかったのだ。</div>
<div>　休みがあけた三日後。彩月は突然学校に来なくなった。その前日、彩月が走って校舎を飛び出したのを今でも私は覚えている。</div>
<div style="text-align: right;">続く<br />
<br style="text-align: right;" /><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/41/" title="" target="_self" style="text-align: right;">前の話＜その8＞</a><br style="text-align: right;" /><br style="text-align: right;" /><a href="http://whiteapple.side-story.net/Entry/43/" title="" target="_self">次の話＜その10＞</a></div>]]></content:encoded>
    <dc:subject>長編小説</dc:subject>
    <dc:date>2015-06-03T01:12:29+09:00</dc:date>
    <dc:creator>ジョニー</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>ジョニー</dc:rights>
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